第13話 投票
奥山の話は続く。JIP選抜総選挙についてはかなり情報を集めているようだ。
「KIPのファンでも速報にゆだねたらどうかという人も多くいるようだ」
「速報?」
総選挙に詳しくない俺は「速報」がよく分からなかった。
「ああ。総選挙は最終結果発表以外に速報の発表が行われる。これは投票開始の翌日に途中結果が発表されるものだ」
「そんなに早く発表されるのか」
投票期間は2週間あるらしいが、そのうちのわずか1日の結果で速報が発表されるということか。
「そうだ。ネット投票だし結果はすぐ集計できる。速報にランクインしたメンバーでKIP最上位メンバーに票を集中すればいいんじゃないか、という声があるんだ」
なるほど。どちらにしろ最終的には1人しか残れそうに無いなら速報最上位に全員で集中するのも手か。
俺は正直よく分からなかったので、速報順位にゆだねる案が一番いいのではないかと思った。何にしろ、KIPメンバーが誰一人ランクインしないというのが最悪の結果だろう。それだけはKIPの未来のために避けたかった。
◇◇◇
そして、10月になり、秋の総選挙の投票が開始された。俺は速報を見てから考えることにしたが、吉川はもう今日中に糸島ルカに全て投票するそうだ。もしかしたら、速報に糸島ルカの名前が出るかもしれない。
そのような期待もあって、普段は見もしないJIP選抜総選挙の速報発表のネット中継を兄とともにリビングで見ていた。
公演が終わったばかりの東京・TIP劇場に、JIPグループ統括プロデューサーである高森祥子が登場した。
「それでは、JIP選抜総選挙の速報を発表します。まずは32位から25位です」
ついに速報が発表されていく。下位から発表なのでKIPメンバーが入っているならすぐ発表されるだろうと思ったが、その予想は当たった。
『31位 KIP研修生 ──佐藤奈美!』
まず、研修生の佐藤奈美の速報ランクインが発表された。糸島ルカはさらに上にいるのか?
だが、それ以降、KIPのメンバーが名前を呼ばれることは無く、速報発表は終了してしまった。
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