こんなバイト二度とごめんだ!

星之瞳

第1話

俺には三分以内にやらなくてはならないことがあった。それも繰り返し。

事の起こりは大学で『簡単にできる、誰にでもできる。高額報酬一万円』のバイト広告を見たことだった。

なんでも与えられた課題を三分以内に片づけていくだけなのだそうだ。

これなら簡単とよく考えもせずに応募した。


バイトの日、俺は会場の第三講義室に向かった。あらかじめ教えられた番号の椅子に座ると目の前に何やら分厚い紙の束と、筆記用具が置いてあった。


時間になると壇上に一人の男が現れた。そして

「お集まりいただいてありがとうございます。今日のバイトの内容ですが、机の上に20枚つづりの計算式を書いた紙の束ががあります。まず私が1ページはじめと言ったら、1ページを開いて計算式を暗算で解いてください。スマホや電卓の使用は認めません。3分経ったら、止め、次2ページ目をめくって、スタート。と言います。そのようにして最終20ページまで連続して計算を行います。ただそれだけです。何かご質問は?」

俺は『なんだ、3分以内に計算すればいいのか簡単じゃん』と心の中で思っていた。


「質問が無いようなので始めます。1ページ目開いて、始め」3分後、

「終了、2ページ目開いて、始め」と3分ごとに次々と計算を進めていった。

その計算式は最初こそ単純なものだったが、ページが進むにつれてだんだん難しくなり、暗算でできるレベルではなくなってきた。それに問題数が多くとても3分では全部終わらせることはできない。掛け声に合わせてやってはいたがだんだん疲れてきて問題を解くのが難しくなってきた。だがずっと見回っている人がいたのでさぼるわけにはいかず・・・・。


「20ページ終了。紙の束を閉じてペンを置いてください」

あちらこちらで、フーと言う声が聞こえた。俺は疲労困憊だった。

「今から係の者が答案を確認の上バイト代をお支払いします。そのまま着席していてください」その声に従って見回っていた人たちが答案を確認し引き換えに封筒を渡し始めた。答案の回収と封筒が配り終えたことを確認した壇上の人は

「本日は終了します。お疲れさまでした。解散」と言った。


俺はずきずきする頭を抱えながら外に出た。自販機でスポーツ飲料を買いベンチに座って少しづつ飲んだ。もらった封筒の中を見ると確かに一万円が入っていた。

確かに拘束時間は短いし、いいバイトだったと思うが、「こんな頭を使うバイトは二度とごめんだ!」俺はため息と伴にそう呟いた。

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