爆弾処理班には三分以内にやらなければならないことがあった

伏見ダイヤモンド

爆弾処理班には三分以内にやらなければならないことがあった

 爆弾処理班には三分以内にやらなければならないことがあった。

 それは都市の中央部に位置するビルにて発見された爆発物の処理である。

 現在、俺を含めた数名の爆弾処理班により爆弾の解除が試みられていた。

 作業の中心となっているのは経験が豊富そうな初老の男性だ。

 男は先ほどから爆発物の表面を眺めているだけで、なかなか内部までは探ろうとしなかった。

 

 「おい、さっきから何してるんだ。もう三分を切ってるんだぞ。まだ解除できないのか?」


 俺はいらつきながら爆発物に取り付けられてるタイマーを指さしながら言った。

 男は左右に頭を振った。


 「いや、すまない。全くわからない。俺、爆弾を扱うのは初めてだし……」

 「……は!? お前爆弾処理班じゃねえのか!?」

 「違いますけど」


 男は悠然ゆうぜんとして答える。


 「じゃあお前だれだよ!? なんでここいるんだよ!?」

 「野次馬です」

 「今すぐ出てけ!」


 抵抗する男を引っ張り出し、部屋の外に放り出す俺。

 今の無駄なやり取りのせいで時間を大幅にロスしてしまった。

 とにかくもう時間がない。

 チカチカと点滅するタイマーは残り時間が一分であることを示していた。

 俺は隣にしゃがみ込んで深刻な顔をしている男に向き直った。

 

 「おい、そこのお前……お前は解除できないのか?」


 すると男は焦った顔で。 


 「いや、俺は爆弾処理班に配属されたばかりで、まだ扱ったことなくて……」

 「……まじかよ」


 この場にいる他の者に聞いてみるも、返ってくる回答は全て同じだった。

 誰一人として爆弾処理の経験がないと言う。

 嘘だろ、と俺は頭を抱えた。

 コイツら、役立たずすぎないか?

 ていうか爆弾処理できない奴らがなんでこんな所にいるんだよ。

 

 「お、おい! もう残り時間がねえぞ!」


 その声で我に返り、顔を上げてタイマーを見ると残り時間は10秒になっていた。

 目の前にいた男が俺に手を合わせて懇願してきた。


 「頼みのつなはアンタだけなんだ! 頼む! なんとかしてくれ!」


 その要求に、俺は……。


 「え? 俺も今日が初めてだけど」

 「……………」


 その場の男たちの顔が絶望に染まった瞬間、俺の視界は真っ白に染まった。

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爆弾処理班には三分以内にやらなければならないことがあった 伏見ダイヤモンド @hushimidaiyamondo

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