居候を飼っていた

@No-Sides

居候を飼っていた

居候を飼っていた。


その居候は毎日小さなことに一喜一憂した。

友達と楽しくお話をしたこと、近所との子供とのあれこれをひまわりのような笑みをたたえながら私に語った。

私はそれを半ば冷ややかな目で見ていたことをここに告白する。

私は楽しそうに語る居候を内心でバカにしていた。バカにするという表現は正確ではないかもしれない。

不思議でたまらなかったというべきだろうか?

辟易していたのかもしれない。

居候の語る話はとにかくつまらなかった。

オチが無いのは当然のことだったし、話はもたつくし、変な解説が入るから聞きづらいことこの上なかった。でも楽しそうだった。


何度その話面白くないよって言おうか迷った。

その話結局何なの?って言おうか躊躇した。

でもやっぱり言えなかった。だから私はうんうんと相槌を打ち続けた。


その居候は今日居なくなった。

私は一抹の寂しさと解放感を覚えた。


私は居候の話を思い出した。

そして考え込んでしまった。

私はあんなふうに楽しそうに話をすることができるだろうか?

今日あった小さいくだらないことを幸せと感じられるだろうか?

私は一抹の寂しさと解放感と確かな敗北感を覚えた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

居候を飼っていた @No-Sides

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ