NTRTA⑦結局俺は寝取られて、後は妄想でしょ?あれ?結婚式は?

「結局何だったんだろうな」


 富士山の麓まで来て、各世の出会いから浮気までの旅路と、散華の『こうなったら怖いね』みたいな妄想を見せられた。

 

 各世も結局連絡取れなかったしな、この間会った時には結婚する気だったみたいだけど、それで連絡取れないってどうなのよ?


 何か各世の最後は…貴哉が階段から落とされるサスペンスモノみたいになっていたけど…


 散華は何かやってんな―ぐらいは思ったけど大変だったみたいだな。何がどう大変かは良くわからないが。とにかく大変だったみたいだな…


 まぁ事情が分かった所で何をするまでも無い。

 散華の話のスケールがデカすぎて、そして各世に至っては俺が直接関わってるのに、この何年もずっと俺だけ放置されてたからな。

 俺に残っているのは『NTRを昔からされてました、ムシャクシャしたから高校の時の同級生の友達とエッチしたら上手くいきそう』これだけ。



 そもそも各世とは連絡が取れてないままで…てか、もう夕方か?めっちゃ腹減ったな。

 

「タツさん、帰り何か食ってきましょうよ」


 隣で普通にゲームしている散華のお母さんに聞く。

 何かこの人は散華みたいで楽なんだよな。

 小学生の時の友人みたいな気楽さがある。


「オレさっき食ったが?まぁ別に食えるが。とりあえずこのロープレ終わりそうだから、もうちょい待ってくれ。あ、後、孫一社長がちょっと話あるって」


 孫一社長?あ、よく見るとタツさんの横で横になっている白髪の老人がいる。

 

「君が無太郎君か?一応この家の主の白髪孫一です」


「はぁ…はい」


「白座と白髪かけたけど駄目だな、俺はもう駄目だ…」


 白座が本名か?本名分からないのに駄洒落が分かるわけ無い。


「で、話ってなんすか?」


「いや、君、多分見えてるなぁって思って」


 何が見えてる?


「いや、幽霊とか変なの見えない?自殺した後輩のくだりの時に違和感を感じてね、あれぇ?って」


「いや、特には…昔、厨二病っぽい感じでしたが…」


 それより俺はタツさんのゲーム画面を見て違和感を感じた。

 変なVR付けられた時はオープンニングだったゲームが今やレベル70、最後まで来たという。

 きっとデータロードでもしたんだろう。そうだろう。

 


「いやー久しぶりに100時間近く寝ないでゲームしちゃったよ(笑)無太郎のせいにしてヒロから公認でゲームし放題、助かったぜ!」


「はぁ…まぁ助かったなら…それにしても…100?」


「あぁ、100時間」


 えーっと…24かける4は96って事は…4日!?

 今日結婚式の日じゃん!始まってるじゃん!?時計を見る…


「タツさん!お、俺、今日が結婚式!!今から式始まるよ!俺の!!」


「え?お前の式?今日なの?まぁアレか。他人の青春、3回分ぐらい早送りとは言え、見たからな。ちなみに食い物とトイレは無意識で勝手にやってから安心しな、ただし風呂は入っていない、4日間も」


 そういや俺、何か臭えし…だったら意味無くやたら長く俺がキツいだけの各世と散華視点の貴哉と今川のイキ顔とかカットしてくれよ……じゃなくて…


 とりあえず親父に電話しよう…



「もしもし?とうさ『お前、どういう事なのか?わざとか?わざとやってんのか?』


 ウ~ン、キレてる…まぁキレるわな。息子が結婚式前と式で2回失踪したら…


『しかも各世ちゃんも来てないんだよ、何でおっさんとその奥さんだけで式場にいるんだよ、意味わかんねーよ…まぁ両家合わせて10人以下の小さい感じでやってて良かったな』


「各世も?そうっすよね、ゴメンナサイ。おっしゃる通りです」


『え?お前も各世ちゃんの事、知らんの?お前、本当にこれから【ガシヤアアアアアアアアア!!!!】うおおおおお!?』


「おお?父さんどうした?何かスゲェ音が…」


 電話の奥から聞こえる…馬鹿の声…


――起死回生!我が力、無太郎の為に!――


――散華必勝!WNTRビデオ晒し!――


 散華の声が電話から聞こえる、アイツ、四字熟語みたいなの使った戦隊ヒーローの名乗り口上みたいな掛け声をすぐ使うから分かる。


『いや、散華ちゃんかな?口しか見えないけど自分で散華って言ったしな、まぁそれが何か落ちてきた…テレビ電話にしようか?ちょっと待って』


 いや〜…便利な世の中になったよなぁと思っていたら式場が映った。

 何だあれ?


 散華は昨日までの黄色い対魔忍姿ではない。


 相変わらずぴっちりしているが、頭は狐面で口だけ空いて、ヘッドギアと一台になっている。

 顎周りまで包みこんでいるので口の周りしか見えない。

 全身ら焦げ茶のストッキング素材みたいな薄手の全身タイツで、上半身は着物風の上着に帯留めの様なコルセット、そして腕には何かサイバーな手甲、下半身はサイハイブーツに足甲、正面からの股周りはその…要は透けるパンストしか着てない人だな…痴女だ。


『主君!無太郎様の為に!爛れた幼馴染達の関係の成敗に参った!絶対に負けられない!』

 

 そこには俺、各世、貴哉等、主要な人物は1人もいないが…


『NTRに対しては3分以内にしなければならない事がある!私、散華こと!くノ一ヒーロー・バーストフォックス!そしてこの尻穴に入れるナインテイル!これは10秒ごとに力を増す媚薬だ!3分後には無太郎の事しか考えられなくなる廃人ヒーロー!それがバーストフォックス!』


 何言ってるんだ?つまり痴女か?


「ヤバいな、散華、頭がイカれちまった…頼む、無太郎…認知してくれ…」


 散華の母さん俯きながら言った…頼まれた…

 そして孫一さんが…


「散華ちゃんを子供の頃から知ってる俺が説明しよう。想像が大分入るが。」


 白座さんの話だと、俺と会うまでは本気で頭が悪かったらしい。

 世の中殴れば解決すると思っていた散華は脳がサバンナの動物以下の所で止まっていたと。

 中学等は私立だったみたいだけど、白座さんは超金持ちだから散華を保護していたそうだ。

 天然記念物レベルで。


 高校に入り、ちゃんとしようとしたが、そもそも馬鹿のVIPみたいな奴だ。各世にも聞いた事あるが、とにかく散華と関わりが欲しい奴が群がり散華自体には興味が無いのだ。

 いや、更に悪質なのは、散華自体に興味がある奴の目的はその【力】のみ。

 結果的には庇護してくれる筈の組織には裏切られ、学校では別の組織にその力を狙われる。

 

 散華のちゃんとしようと言うのは、その様な外の悪意に触れる事ではない。

 ただ、人に甘える事だったらしい。

 本人じゃないと分からないけども。

 そこで俺と出会ったそうだ。


―無太郎、勉強わからないよ、教えて欲しいな―

―無太郎、お弁当忘れちゃった―

―無太郎、私、朝起きれないんだよ―

―無太郎―無太郎―無太郎―無太郎―


 そういやぁ…そうだな。俺も誰かに頼られる事無く1人でやってたから嬉しかった。


 昔は各世が俺の面倒みてくれたけど、人と親しくなれないのを病気扱いするのは小学生まで、俺の場合、中学からはただのコミュ障扱いだからなぁ。


 とにかくそこで、いきなり頭に俺への恋という文化が頭に入ったもんだからパンクした。

 パンクした所に催眠術とは言え、恋愛で一番やってはいけない浮気(俺と散華は付き合ってないが)をしたと勘違い。

 20歳過ぎぐらいの時にノイローゼになり食事を取らなかったり自傷行為をしたりと、間接的な自殺を敢行したそうだ。


 んで、記憶を消したと。


 そんな馬鹿な話があるか?と思うが、散華ならやりそうなのが怖い。


 そして今、全てを思い出し、俺と繋がり、最後のチャンスとばかりに色々やらかしてる最中だそうだ。

 

 その散華だが【一つ!無太郎を守る為!】…【2つ!無太郎を愛する為!】…みたいな事をずっと言いながらケツに何か挿している…そして


『無太郎への愛が全力で挿入された!そしてこれがWNTRビデオ晒し也!』


―無太郎より気持ち良い!♥貴哉のチ◯コきもちいいのおおおお♥たかやすきいいいい♥♥―


―無タロオおお♥もっとおおお♥浮気女の各世の事なわかんかわすらてえええええ!!♥♥♥―


 両腕のアームバンドみたいなものから何か出し、何故か各世と貴哉のエロ動画と、俺と散華のエロ動画が同時上映された。

 ほう、NTRビデオレターってやつか、馬鹿だな。


『命(社会的に)をかけた必殺技だ!これが私の信念だ!』

 

 散華が大騒ぎ、結婚式場という現場は大惨事だ…


 すると部屋の奥から妙齢の女性が出てきた。どんどん人が出てくるのはやめてほしい。もう誰が誰だか分からん。


「コイツは俺の奥さんの白座千代、秘密組織ごっこ遊びが趣味だ。」


「そしてクソスライム、悪くないスライムではない、性的に悪いスライムだ。」


 白座さんとタツさんが悪く言った事にぷるぷるするスライム…じゃない、白座孫一さんの奥さん。


「まぁ良いですよ、それで…それよりあのスーツは…私の作った散華専用の償いのスーツ…愛する人の為にしか動かず、愛する人しか救えない拷問器具の様な物よ…約3分以内でフルパワーに達し、感度最高の状態で3分間感覚麻痺させ筋肉から脳まで覚醒させ通常の10倍の力を捻りだす。ただし3分後、愛する人の寵愛を受けねば…」


「受けねば?」


「感度300倍のまま身体動かなくなり、愛する人の寵愛で発散しなければ感度が蓄積し発狂する…他の男とすると吐き気を催す様な苦痛に襲われ発狂する。きっと近くにいるんだな…無太郎とやらは…」


 発症率高いな…


「いや、無太郎は俺ですけど…」


「え?何でここにいんの?」


「いや、それはこっちの…」


「早く行ったほうが良いぞ!?散華脳死するぞ!?」


 

 ギョッとした顔で俺を見る千代さん。

 ええ?死ぬ?そして式場でも散華が混乱していた…


『無太郎!…これから私はお前を我が主と…あれ…無太郎?無太郎がいない…まさか!?各世も?あれ?』


『あの…散華ちゃん?今日息子はバックれましたよ、新婦も…』


『まさかうどん屋に!?結婚式からにげたのおおおおお!?お!?♥うおお!?♥ォ゙ッ♥オゴッ♥』


 散華は膝を着いたと思ったら急に仰け反って痙攣し体液を噴出している。

 唯一コスチュームから見える口、舌を突き出し上半身はW、下半身はの文字を作り背筋を反らす散華。

 

『ムダッ♥ろ゙♥ダズゲッ♥ムダ♥ア゙ア゙ッ♥ムダ♥ア゙ア゙ア゙ア゙ッッッオゴ♥ォ゙ッ♥ォ゙ッ♥』


 ぷしッ♥プシュッ♥シャアアアアア…


『父さん、とりあえずその生き物を家に連れ帰って貰って良いかな?そしたらちょうど1時間ぐらいで落ち合えるから…』


『え?コレを!?それにお前、最近時間を全く守らないけど…』


 今度は約束を守ると伝え急いで支度をする。

 車に急いで乗っての帰り道、タツさんが言った。

 

「散華な、人との距離感がまだ分かってないからな、大袈裟に言うんだよ。ごめんな、だからパーキングでオレがうどん奢ってやるよ、食って帰ろうぜ」


「いや、早く帰んないと…」


「えぇ?良いじゃん、もう結婚とりやめっしょ?そしたら散華肉奴隷で良いよ、箸太郎なら悪い様にしないだろ?それよりオレという姑への機嫌取りをした方がした方が良いかもしれんぞ?」


 結局1時間以上かけて帰ったので計算では散華が死ぬ。


 散華の事はその時になってみないと分からないし理解出来ないからその場で何とかするしか無いが、各世に関しては考えなければいけない。

 えぇ…でも白座さん家で見た過去話みたいなの本当かなぁ?

 そんな事を考えていると、各世からメールが来ていた。


『無太郎へ 式に行けなくてごめんなさい きっと私 罰が当たったんだと思う もう会えない 本当にごめんなさい』


 意味深なメールはもう懲り懲りなんですが…

 とりあえず帰ろう。『とりあえず後で電話するから電話出ろ』とだけ送った。

 


 しかしあれだなぁ…中学の時…各世が俺への見方が変わったと言ってたアレ…いや、その前に見えてた変な影。やっぱり本物だったのかなぁ。

 いや、俺と同じおかしな人のアドバイスだけかも知れないけど…

 中学の時に自殺した後輩…両親と俺の間に居てごめんなさいを繰り返した影。

 謝るくらいなら自殺なんてすんじゃねーよと口に出してしまって揉めたあの日…

 

 まさか死んで異世界に行った人って…そんなファンタジーあるかよなぁ…



 帰ると親父に殴られた。そうですよね…

『とりあえず殴らせろ』

 そうですよねぇ…申し訳無い。

 タツさんも自分のせいだって謝ってたけど…そういう問題じゃないよな。結婚式台無しにしたんだから、幼馴染との。


 散華は俺の部屋に母親といるらしい。

 とりあえず各世より、話の通りなら散華からだ。


 部屋の前に行くと話し声が聞こえる。


――また一つ無太郎君に嫌われました…迷惑かけてごめんなさい――


――良いのよ…散華ちゃんは小さい時に藤原さんと一緒にいたの見たけど大きくなったわね――


――お母さんの事知ってるんですか?私はお母さんみたいになれなくて…それで…――


――貴女のお母さんは小学校が一緒だったの、昔から馬鹿よ。でもね、各世ちゃんみたいな事はしなかった――


――え?――


――好きな人にずっと一途で…私もあの人と小学校から一緒、藤原さんに憧れて…今の生活があるのよ?――


――それにね、ずっと幼馴染の子に変な事されててね、私もやってしまったけど…それでも我慢して、弱い者イジメはしなかった――


――うぅ…耳が痛いです――


――貴女も同じ…傷つけてしまったらすぐ謝るの。いつも傷つけてしまったかどうか考えてるの…だから何も考えずに行動してすぐ謝って――


――大事な事は話をするの…本当は喧嘩がとても強いのに…話をしないとって…散華ちゃんの話をよく聞いたもの…各世ちゃん以上に…――


――無太郎君が私の話を?――


――そうよ…各世ちゃんの話は余り聞かなかったな。散華って奴が…っていつもね。近すぎるからかなって思ったけど…――


――だから…自信を持ちなさい。今日、始めて話したけど…藤原さんにそっくりね…憧れの人が大事な息子の嫁に来てくれるなんて素敵だもの――


「いやいや、普通に話してるじゃねーか!?死ぬって嘘じゃん!」


 長々話しているからついつい突っ込んでしまった。


「アンタ、無粋な事するわね?良い所にいきなり入ってきて…」


「無太郎!むたろおおお!!」


 う~ん…早く各世に電話しないと…その前にコレか…


 

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