散華の異世界【閲覧注意】〜罪と罰

※胸糞回かも知れない…


 各世の態度が気に入らない。

 浮気がバレて、嘘ついて、家族を連れて、嘘を付く…あり得ないんだよ。


 だから侵入して2度と顔を出せないようにしてやると思った。

 直後、何者かに襲われた。

 何も出来ず一方的に負ける。

 先手必勝ではない、もし先手必勝であれば、この現代日本で1人で生きていかねばならない。

 そんな事は無理だ。


 私は暴力でなにか失敗していた筈だった。

 暴力で解決しようとして、完全に負けた。

 でも、覚えていなかった、今の今までは。

 母の愛情で、姉の優しさで、消えていた。

 私が立ち上がれなくなった日の事が…

 

 母さんは…忘れてはいけないと拳で言った。

 無太郎と交わらなければそのままで良かった。

 無太郎と向き合うなら…暴力とは如何なるものか?

 私は殴らないと分からない、そんな駄目な奴だ。


 私の罪を…そして、もし無太郎が、私が、各世が、全員が選択を誤れば起こり得た世界。


 バイト ナインテイルズ 今川 各世 貴哉 私


 母さんに言わせるところの【異世界】


 そこを通過して、 私は罪を思い出す。

  

―――――――――――――――――――――――― 


「ナインテイルズの沙山華サザンカだと!?チクショウ!何でそんなもんが!?とにかく殺せ!」


 向こうは悪そうな人達3人、こっちは1人。私は女の子。しかも殺せとか?

 更に向こう銃火器あり…まぁそれでも…


「余裕なんだけど…ねッ!」


 銃口の射線に入らなければ関係無い、身を低く構え高速で動き回り1人ずつ制圧していく。

 裏拳、回し蹴り、そして手刀。


「グガァ…これがぁ…サザン…ウゥ゙ッ」


「ざっこいね!もっと強いの来ないのかなぁ?まぁいいや、バイザーから見てるでしょ?鎮圧したから回収してー」

 

 今の私は【九尾ナインテイルズ】という何でも屋に近い武術集団のメンバーとして警備の仕事をしている。

 まぁ割の良いバイトを探していた所、知り合いから教えて貰った。

 主に特殊な要人警備や護衛、世間には言えない様な荷物の警備などをやっている。

 今日もお金持ちが輸入していたコンテナの警備をやっていたが、余裕だった。

 これで時給が一万近いから、学生としてはありがたい。

 普通のバイトより割は良いし、自分で言うのも何だけど、私は一般人よりは強いから。

 

 うちの家系は元々、武術の家柄で家族も皆、武術をしている。

 阿修羅道場という古武術、その中でも【世界最強】と言われ、恐れられている母。

 そして、4人の子供の中で最も母の血を継いでいるのが私だった。

 他の九尾のメンバーからの評価は、常人の数十倍はあると言われるフィジカル、ナインテイルの技術力の注ぎ込まれたくノ一型の全身を包むバトルスーツによって、接敵戦闘能力は随一と言われている。


 もちろん母が伝説の様な人で、その娘という事は、ナインテイルズのリーダー以外、学校の友達すら知らない秘密。

 私は強さも青春も、全部手に入れる為にナインテイルズの事は秘密している。

 それもこの、ちょっと変わったバトルスーツのおかげで住み分けが出来ていると思う。

 このバトルスーツも近未来くノ一って感じでちょっと恥ずかしいけどね。


「明日も学校…早く寝ないとなぁ。また無太郎に迷惑かけちゃうし…でも、お迎えに来てくれるのも嬉しいんだよねぇ♥」


 夜は身体を鍛え、ついでにお金稼ぎのバイト、そして夜が明ければ…


「無太郎!おっはよー!元気!?」


「お前、寝坊して家に迎えに来さしといて…よくそんな元気な挨拶出来るなぁ」


 何だかんだで寝坊した…でも迎えに来てくれると一緒に登校出来るからね♥


「いつもありがとね、散華の事見てもらって!」


「あ、いえ、おばさんもいつもお菓子ありがとうございます!」


「あいよ!行ってらっしゃい!」


 母さんと軽く挨拶をする無太郎。


 一緒に学校へ向う、人波に入る前、2人だけの時間が終わりに差し掛かった所でこちらを見ずに無太郎が言った。


「なぁ散華…その、今週の土曜の放課後さ、話があるんだ…時間作れるか?」


「なぁに無太郎?かしこまって…んん?分かった!みなまで言うな!楽しみにしてるよ!」


「おお!?そうか…まぁ楽しみにしていてくれ」


 もしかして?もしかして!?♥


 私、根多散華と高梨無太郎は同じ高校2年の同級生、彼はクラスの友達だ…友達?

 客観的に見ると、親友より距離の近い親友って感じかな?

 知り合ったのは高校1年の時、同じクラスになったから。

 そして何で急に仲良くなったと言うと…


 無太郎の幼馴染、高校1年のときに中学から付き合っていた無太郎の彼女、各世が浮気したからだ。

 その当時、無太郎はそれこそ名前の通り【無】だった。

 無の極地にいるような彼を気になった私は聞いた、そして浮気、裏切り…何でそんな残酷な事が出来るんだろうと、憤慨した。


 裏切り…それは正義ではないと思う。

 私はあの恥ずかしいくノ一風ぴったりスーツを着て夜の街で戦っているのは、アニメの様な正義の味方に憧れている部分もある。

 言い訳ではない…なので、まぁ、とにかく、正義でない事が嫌いだ。 

 

 無太郎は各世を…もう一人の幼馴染と歩いている所を見つけ…たのは良いがそのままホテルに入っていくのを見たそうだ。

 だが、何故か?

 付き合っていたのは無太郎では無く、浮気した幼馴染と最初から付き合っていた事になっており無太郎は勘違いしていただけのストーカーDV野郎という事になっていた。

 それは真実ではない!正義ではない!釈明しないのか!?と無太郎に言うが…

 

「正義とか真実とか、そんなんは良く分からん。ただ、お前がそうやって怒って、味方でいてくれるだけで、それで良いんだよ」


 私も中学では強さを追求するあまり孤立していたがそれは自業自得、そして変わろうと思い女の子らしくしようとしたら、高校では何となく周りに人がいた。

 元々、家…というか双子の兄と姉が有名人で一般的な戸建ての家に芸能人やら政治家が出入りしている不思議な家族で、地元では少し有名だった。

 その恩恵に預かろうと人が集まる。誰も私個人を見ていない。だから親友と呼べる友達は居なければ、私の事は暴力女としてしか見ていない。

 

 そんな家が嫌で、どうしても私は家族とは一線を引いている。

 

 しかし無太郎だけが、不思議と自分から距離を詰めようとしない私との距離を縮めてくれた。

 弁当を忘れたら半分くれた、勉強を教えてくれた、しょうもない愚痴を聞いてくれて、存外だらしない私をいつも助けてくれる。


 それに初めてだった。


「いつもありがとう、散華。感謝してるよ」


 真っ直ぐ私に…私だけを見てくれた。


 どいつもこいつも私では無く、私の家族、私の強さ、そればかりだったのに…

 その瞳に写っていた自分を、今も覚えている。

 

 無太郎と2人で過ごした高校1年、そして学年が上がり2年になってクラスが別になっても無太郎とは一緒にいた。

 無太郎はクラスではいつも1人で、近寄りがたい空気を時折出していた。

 そんな時は気を使って自分のクラスの女子と話したりしていたが…何だかんだでついつい無太郎と話したいから近づいて一緒にいた。


 今は高校2年の秋、来年は受験や将来の事で忙しいだろう。

 青春を楽しむためにも正直、無太郎とグフフ♥と思っている。

 無太郎にはもう、各世の時の様な辛い思いをさせたくない。

 だから私は…絶対に裏切らない!





 色々思い出しながら、私は無太郎に「話がある」と言われ正直浮かれていた。

 私が、ニコニコしていると、派手なグループの男女が集まってきた。

 この派手なグループが私のクラスのヒエラルキーのトップにいる集団なのだろう。


 集団からクラスの端の方を見た時に目があった。   

 当時、暴力で解決するのはやめろと無太郎に言われて、未だに私自身は消化不良の女…各世だ。

 その顔を見てテンションがだだ下がり…。


 浮気して、1年の時には馬鹿みたいな無太郎のDV&強姦未遂(実際は各世の浮気なのに)の噂が流れた時には否定せず、貴哉とか言うもう一人の幼馴染と元から付き合っている事にして無太郎を苦しめた女。


 私は無太郎が『気にするな』と言ったので普通に接しているが、正直嫌いだ。

 そもそも流されやすく言い訳ばかりで暗い。心も弱いんだろう。すぐ幼馴染を頼る。


 この女は無太郎に『また3人で幼馴染の関係に戻りたい』と言ったそうだ。

 『それで良いよ』と言った無太郎も無太郎だが、この女も貴哉とか言う奴も、よくそんな事言えるなと思った。


 睨みはしないが蔑んだ目で見ていると、グループの1人…確か今川だったか?俗に言うイケメンらしい今川が話しかけてきた。


「散華ちゃん、気分悪そうだね?保健室行く?」

 

「いや、大丈夫。それよりさ…」


 コイツは人当たりが凄まじく良い。更に言えばボディタッチが多い。

 私は距離感というのがいまいち分からないし、自然にやるものだから払い除けたりしないが正直戸惑う。

 今も心配してやっていのかも知れないが肩に手を回してきた。

 前は親しい証なのかなと別に気にしなかったが、無太郎の事があってから正直面倒くさい。

 ただ、細かく説明するのも面倒なので話を終わらせた。


 コイツはコイツで各世と関わりがあるみたいだから手に負えない。

 面倒な事にならなければ良いけど…と思いながら休み時間には無太郎の所に行き楽しい1日を過ごした。


 その日の夜、バイト先【ナインテイルズ】から連絡があった。

 明日の夜、長時間の仕事があるとの事。

 4日後はもしかしたら無太郎とお泊りかも知れない連続で泊まりは流石になぁ…


「母さん!ちょっと友達の所に泊まるかも!勉強するから帰らないよ!」


「別に構わないが最近物騒だから気をつけるようにな!携帯だけ持ってけよ」


 ウチは放任主義なので緊急時、連絡が取れれば良いという方針だ。

 無太郎にメールする。多分、明日も寝坊するから頼むぞ、と。

 と言いつつ今日はよく寝て、楽しい毎日の為に!

 明日に備えよう無太郎の為にしっかり寝よう♥

 ベッドの中で、体育祭の時に無太郎と一緒に撮った写真を見ながら、幸福感に包まれながら寝た。



 私はこの日を最後に…いつもの幸せな夜やってこなくなるとは思わなかった…

 


「おっはよー!今日も目が冴えちゃって朝から元気!」


「いや、それ寝坊じゃないじゃん!」


 いつもの朝が始まる、少し違うのは明後日の事があるから私は浮かれ続けていた。

 こうなってくると今日のバイトもめんどくさいなぁ…

 無太郎とも、そういう関係になったら辞めようかなと思ったが…でも何か私に出来るかというと悪いやつを倒すぐらいしか…まいったな…コンビニとか?

 出来るかなぁ…でも…無太郎の為なら…ムフフ♥


 その日も無太郎と一緒に過ごす事が多かった。

 でも、何となくだけど…無太郎が…私の事をよく思っているのが分かるんだ♥

 だからさ、私も笑顔になって…私も笑うと無太郎が笑うんだ。

 それで胸が熱くなるんだよ、苦しくて、でも悪くない感じの胸が一杯で♥

 無太郎の唇を見て、ドキドキするんだ…

 幸せなんだよ…私は幸せって実感出来る。


 あぁ…私ったら…本当に…無太郎の事が好きなんだなぁ♥


「バイバイ!無太郎!また明日!」

「あぁ!散華!また明日な!」


 何だろう、ずっと心がウキウキする。

 バイトも何だか捗りそうな、絶好調とはこういう事を言うのかと感激した。

 バイト先、ナインテイルズに電話をかける。


「ハイハイ〜いつもの埠頭ね。電波悪いから無線で連絡?はいよ〜」


 ロッカーに置いてある新しいバトルスーツと無線機を回収して、コンビニでお菓子と飲み物買って行く。

 何もなければ漫画でも読んで終わりだもんね。


 現地に着いてコンテナの前を陣取る。

 

「ヘッドギア嫌いなんだよな…」


 一応、スーツの上から警備用のコートを着ておく。


 それから1、2時間経ったぐらいか…人の気配がした。

 同じ警備会社のコートだけど…この時間にねぇ…ちょっとカマかけるか…


「お疲れ様でーす!交代の時間っすか?」


「いや、今日初めてのバイト…って散華?」


 ん?知り合い?


「俺だよ!今川だよ!散華もここでバイトしてんの?」


「おお!?ああ、そうだよ?」


 同じクラスの今川…今川啓太だっけ?何か馴れ馴れしい奴…今川はここでバイトしてるんか?


「いやー日雇いでさ、ここにいろだけ言われたからどうしようと思ったけど…ベテランの人がいるから大丈夫散華いるなら安心だわ」


「んああ?ああ、まぁ…でも何かあったら下がれよ?結構危ないからさ」 


「マジで?安全で楽ちんって聞いたのにー!!散華先輩お願いしやすよー」


「ハハハ、何もなければヒマヒマな仕事だよ、今川クン(笑)」


 まぁ良いか。どうせ暇だし、無太郎の話でもしようかな…

 隣同士に座ってお菓子を広げて話す。

 まるで親友同士の様に、距離感をなくす。


「私、今スゲェ恋してんだよ!」


「本当に?聞かしてくれよ!」


 時折、肩を組まれたりしたが、こういう奴だからなぁ

 そうそう、聞いてくれよ!

 それで無太郎の事だけどな?




――あの時、私が無線で確認を取っていれば?――



 私、無太郎が好きなんだ♥心から大好きだ♥



――いや、既にナインテイルズは奴らと通じていたから無理だ――



 明るくて話しやすくて親友で♥



――ヘッドギアは耐異能性能は無かったのか?――



 凄い格好良いんだよ?♥



――私のヘッドギアは対異能はついていない――



 それにほっとけ無いんだよね♥



――ではやはり…バイトに行かない事だったか――



 でもきっと運命、私は一生、啓太無太郎を好きでいるし♥



――そもそもナインテイルズに入らなければ――



 きっと無太郎啓太も私の事を好きだと思うんだ♥




――そもそも好きな人が出来なければ――




 だから啓太啓太

 




――ソモソモ ウマレテ コナケレバ――



――ドコマデモ オロカナ ワタシ――

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