NTRTA(ネトラレタイムアタック)⑤元婚約者の言い訳と、散華のお母さんの目
……………………………何で?こんな?
俺の前に宙吊りになった女。
股から垂らした、まるで褌の様に身体に沿って下がっている所々濡れたトイレットペーパーにはこう書かれている。
【住み慣れた、我が家は、カオースアリーナ】
天井から吊るされたロープ、右足は股関節から外されて背中側に垂れていて、左足だけでロープからぶら下がっている女体。
肩は外されて後ろで縛られ、両方の足は股関節から外されて更に縛りあげられている為に身動きは出来ない。
顔には口の所にストローの様な物が付いている頭から首までを覆うエナメルのマスク。
音もなく、小さな空気孔から少しの呼吸と、首でイヤイヤとする事しか出来ない黄色を基調とした対魔忍の格好の女…数時間前まで一緒にラブホにいた25歳の同級生…根多散華…
『オマエハ キシダンチョウ アナタヲ ゼッタイマモル アナタヲサゲスムヤツハ キル トイッタノニ イザ ナカマガオソッタラ ハンニチモタタズニ ヤメテェ アナタ ブキヲオサメテ ダッテ ププー オサメタラ シンジャウヨネ゙』
何だかわからん言葉を耳元で喋り、この意味不明な儀式を行う直前に、これは花嫁修業だと仰っていた散華の母…根多龍虎さん。
『バー◯ヤン ト イッショ トリアエズ サンシュモリ ナラヌ トリアエズ ビヤクカンチョウ ト クビ ト シシヲバクハ イッテミヨ オマエガ キゼツシタラ ツギハ ムタロウ ダナ』
散華は顔を横に振り必死にイヤイヤとしている。
声は聞こえているようだけど…
ここは、我が家の和室の客間。テーブルを挟んでそれを見ている俺と俺の両親。
先程まで各世と各世の父親がいた。
ラブホに行った後、次の日にこうなった…何故か?
それを今から説明しよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「私達…付き合ってるのかな?♥」
「いや、俺まだ別れてないし…もうちょっと待って…色々整理させてくれ」
女を前面に出してくる散華…してしまったものは仕方無い…結局夕方になってもうた。
何だろうな、友達と思っていた奴が俺の事を好いていた…そしてやる事をやってしまった。
散華は尽くすタイプの様で…尚且つとても好きモノな様で…最近ご無沙汰もあったし正直、各世としま直近の記憶はマグロ寿司…は言い過ぎだが全然して無かったから、俺も勢い良く…
後、親友だと思ってた奴がこんなテンションで来ると正直燃える。間男の気持ちは分からないが、やる事やって付き合わない奴らの気持ちが少しわかる様な…いや、駄目だろう。
だらだらと言い訳したが、やってしまった事の責任は取るべきだと思う。これで逃げたら貴哉と一緒だし…
まぁ…現状浮気だしな…よりを戻す事は無いと思うけど…別れる原因の一つでも良いか。
お互い相手がいるんだ…終わりしか見えないわな。
ただ、もう高校生じゃないんだから『駄目だった、ハイ、次』というのは悪くないと思う。
考えれば考えれる程辛くなる、一緒にいた時間が長過ぎるから…思い出が多すぎるから。
でももう学生じゃないんだから…と、2度言ってみるぐらい心が不安定だ。。
親父から電話が入っていた。取り敢えず散華が運転してくれてるので親父に電話する。
『無太郎…お前どうなってんだ?結婚一週間前に強姦と窃盗未遂って…』
「いや、それ誤解…だけどちょっと聞いてほしい」
俺は親父に正直に言った。
昨日の事とその顛末、散華に優しくされてしてしまった事。
後は各世次第で、式はしないし今後は関わらない、だけど騒ぎにもしたく無い、親父の仕事や家族に影響が出ないようにしたいと伝えた。
親父は俺と同じ冴えない営業職、そして太客がベンチャー企業の社長、各世の父親だ。
その派手な仕事のせいか、近隣でも有名な家で、各世の母親はママさん達の顔役だ。
その娘の彼氏の母親。という事で、母親も色々助けられた面もあるらしい。
「そうか…無太郎も色々あったんだな…まぁどうするかは帰ってから話そう…それとな、各世ちゃんと志村さん…お父さんの方な、2人が明日家に来るんだ…その時…だな」
「あぁ分かった。もう地元の高速出口まで来たからまた電話…え?おい散華!?散華!?入城!?おい!また入城してるって!?」
『どうした!?入城!?おい!?プツップープー
何か良く分からんがいきなり電話の電源ボタン散華に押され、そのまま地元の高速出口の城【休憩3時間6000円】に突っ込んだ。
「明日…各世が来る…許さん…絶対渡さん…」
何か良く分からないけど今度は怒り狂ったようにされた。
正直、一回でも二回でも同じだろと思ってしまった俺はクズかも知れないが、別にもう、どうでも良い。
結局、散華を家に送り届けるのは夜になった。
散華の家族がお出迎え、気不味い…
「箸の無太郎、娘の具合はいかがかな?その娘を早く手籠にグワッ!?」
「ウチの娘と妻がご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ない。後日、お詫びを…」
散華のお母さんは相変わらずだけど、お父さんは強面だけど優しい人っぽい。
「いや、そういうのは良いんです。自分こそ申し訳ありませんでした。少し浮気されたからって車盗んだり…」
「「「浮気!?」」」
3人ぐらい反応した、そこで反応はやめてほしい。
でも取り敢えず…メッチャ怒ってなくて良かった。
そしてその渦中の散華は…
「旭君、君はまだ処女でしたね?大切にしなさいよ(笑)」
「なんだなんだ!?ムカツク態度っスね!?いいんッスよ!ウチは結婚まで処女で!」
「そんなクリスチャンみたいなのは女はNTあ~るぅされるぅ♥」
「姉ちゃんはさっさと死ぬッス!!」
妹相手に今日の行為がバレバレのマウントを取っていた…やめろ…とまぁ後日挨拶に来ますと伝え、そこで別れを告げて、家に帰り…親父と話して翌日。
―――――――――――――――――――――
親父は言った、もし浮気を認めないなら俺も志村さんと縁を切る。俺はお前を信じているからな…と。それともうちょっと早く帰ってこい…と。
母親は同席しない、俺は『大変だったね』と慰められたが、正直母親が一番ムカついてるらしい。
事実がハッキリするまでは各世の顔も見たくないと。
俺は別に仲が良くもなければ、悪くもない両親だが、自分の事をそこまで考えているのかと感動した。
が、実は何やら当初から田舎に引っ越す計画を立ててるらしい。
そのきっかけになってるだけというのに少し不満を覚えたが…
縁を切る…か。もしそうなったら幼馴染関係も消滅か…この街の思い出も無くなる…か。
『お邪魔する』
小さい声で挨拶が聞こえたので各世が来たかと覚悟を決め、玄関に行くと…
散華のお母さん!?が勝手に入ってきた…
「え?どうしました?今日はちょっと立て込んでて…「知っている、安心しろ、全部知ってる」
え?何を言っているのか分からないが、そのまま親父のいる和室へ…
「久しぶりだな、高梨。ヨッチャンコバンイカは元気か?後、ロッカーは?」
え?
「え?藤原さん?何で?」
親父の事を知ってる親父も?
しかし「え?」は、俺も同じだ。
「旧姓はやめろ、まぁ押入れで良いだろう。」
「え?、なんですか?何で散華のお母さん?」
俺の肩を掴み、キッと鷹のような目で俺の目を見る。
「散華は発情期の犬みたいなもんだ。金タマ取らなかったオレ達が悪い。無太郎には箸の恩がある。せめて花嫁修業をさせてくれ。アイツは…何でも出来ると思っているざまぁ候補生だ。ウチの長男は色々あり過ぎておかしくなったが、アイツは色々なさすぎておかしいから、今から人の道を分からせる…道徳をこの拳に乗せてな…」
押し入れに入ると同時に『プスッ』と目だけ見える様に襖に2つ穴を開けた…鷹のような目でギョロギョロと監視をする。
何か…見たことあると思ったらゲームだ。
悪魔像みたいな奴の目だけ動いて射線に入るとビーム撃ってくる感じの…
『それと箸太郎…ざまぁはな…自分の手で行うんだ…さすれば悔いは残らん…』
散見の母さんのポジションが見えない。
親父が汗を拭きながら喋る。
「今の人は藤原さん…今は根多君と結婚してるから根多さんなんだけど…母さんと俺は小学生の時の同級生なんだよ、クラスは違ったけどな。昔から奇行が激しいし、この街ではちょっと…しかし何故今?もしかして母さんが友達と一緒にすぐ嘘ついて騙してたからその報復かも…」
「いや、あれが散華の母さんよ?箸とか言ってたじゃん?」
「え?お前の話に出てくるのって丹下さんって人じゃないの?高校の時から友人の丹下さん」
「いや、散華だよ…根多散華…何だよ丹下って…」
「お、おまっ!?あの!?ね…ねた…さんげ…と…いや、散華さんと…寝た…のか?」
「いや、何よその感じ?そうだよ、昨日帰りやってまった。でも根多家の人も許してくれたし良い人だったよ?」
「あ、いや、そうだな…お前がそう言うなら…マジか?…これ…チャンスか…?」
何を親父はブツブツ言ってるのかと思ったら各世と各世が自分の親、お父さんと一緒に神妙な面で入ってきた。
「今日は…お時間頂き申し訳ない。2人の事でね…各世が、話があるそうだ…」
「ボソ(正直、もうどうでも良いんだよな…)」
親父が聞き捨てならない事を俺だけ聞こえる声で言った…
俺は各世が何を話すかで今後を決める事にした。
正直に言ってくれるなら、貴哉を問い詰めてそれで終わりにしよう。
向こうが望めば絶縁はしない、俺にも原因はあるのだから。
もし…認めなかったり嘘を付くなら…それなら…
「まず娘から聞いたよ…今回、ウチの娘がすまなかった」
「無太郎君…本当にごめんなさい…」
貴哉とやってた事は…認めるんだな…
「じゃあ…昨日見たのは本当だったんだな…」
「はい…でもね…昨日…昨日が初めてなの…結婚決まって…何だかフワフワしてて…それで…ごめんなさいっ!もう2度としない!貴哉とは会わないから!もう一度チャンスを下さい!」
「高梨君…それに無太郎君…こんな娘だがもう一度チャンスをくれないだろうか?頼む!」
へぇ…俺だって馬鹿じゃない…散華の言ってた事…当てはめれば誰だって分かる…俺が馬鹿みたいに信じていたから…
それからは謝りっぱなし…父親連れてきて…父親にも頭下げさせて…
1度疑えば何も信じられないか…確かにな…昨日だけ…か…
ずっと…家に貴哉はいたな…昨日の事も具体的な事は言わないだろ、ボロが出るから…はぁ…
親父を見る、親父は認めなければ俺が…と、言っていたが…
親父?どこを見ている!?
目線を追う…今、頭を下げている志村父娘の背中…襖から覗く邪神、鷹の目は俺達4人を順に見た後、白目?みたいな眼になるのを繰り返している。
親父は駄目だ、襖の邪神像が気になって、さっきから「はい」しか言ってない。
確かに俺、親父、各世、各世父、白目を繰り返されば気になる…俺も…つい見てしまったが…違う!
「各世…お前その…」カタ
俺もつい思考がズレてハイって言いそうになったが、耐えながら各世に声をかけようとした時に、本当に小さな音で何かが外れる音を聞いた。
真ん中がガラスで出来たウチのテーブル。
俺は下を向いているが…向こうからは見えない位置、ガラスに反射して志村父娘の後ろ側の天井が見える。
そこには…
〘午後1時10分24秒 幼馴染の清算〙
昨日の黄色い対魔忍が天井の板を外して、目だけ出るアイマスクの様な器具越しに見ていた。
各世を…今にも射殺さんばかりの勢いで睨んでいる。
今、各世父娘の背後には魑魅魍魎がいるようにしか見えない。
上から散華が某蜘蛛男の様に足首に巻き付けたロープを器用に動かしながら、逆さの状態でゆっくり降りてきた。
両手に警棒…コイツ…父娘共々殺る気か!?
思い出せば、各世が疑わしい事をする度にどこからか出てきて暴力を振るい、俺は注意するが各世も疑わしい事をしてるから避難出来なかった。
だから各世に繰り返し行われていたビンタや暴力etc…
その都度、俺は疑いがあっても可哀相だなとかまぁ良いかなという気持ちになっていた。
というか、散華のやる事のインパクトが強すぎて忘れてた。
『娘を許してやってくれるだろうか?』
許す訳ねーだろ、浮気して嘘ついてんだぞ?
だが、その気持ちを言葉に出そうとしたが散華が父娘と自分の頭部が並行になるまで降りてきた。
散華がメッチャキレてる。武器を振り回す気満々だ、だか今回は先を越されてたまるか!
俺も『アンタの娘はッ』って声に出す直前、襖が開いて散華母が音も気配も無く出てきた。
俺は余りの出来事に言おうとした言葉が出ず親父と同じ『ハイ』とだけ言った…と思う。
何故なら出てきた散華母の姿が、先程までの現場帰りの職人の格好みたいな服装ではなく、散華と同じ様な対魔忍…違うな。
全身タイツにサイズの合って無いスクール水着、ゴム長に食器とか洗う時のゴム手袋を付け、透けた素材のエプロンを付けた、まさに変態魚河岸マンという姿だったからだ。
『このまま…結婚式をしよう!?無太郎、私、絶対に裏切らないから』
みたいな事を言ってるが、それよりお前らの後ろが…
散華が警棒持った手を左右に広げ、そのままクロスさせるように2人の頭に当てる瞬間、警棒が消えた。
消えた事で睨んでいた目を見開いた散華…俺と親父からは見える…音も気配も無く、凄まじい速さで警棒を取り上げ、空を切った手を後ろで掴み、散華の両肩を外しながら両手首を首のうしろで固定し、まるで自分の首を抱きしめるように縛り上げた。
俺は何か、各世から聞こえる音声に対して『ハイ』と言った。
それよりも各世の後ろで、まるでマト◯ックスの様に残像が残る速度で散華に口輪をはめ、初めて見る困惑と恐怖の顔になった散華が、身体を捩らせ足首のロープを使い上に逃げようとしたが、散華母は片足のロープ切り、支えを失った足をそのまま折る勢いで背中に持っていき縛り上げている手首の紐に一緒に縛り上げた。
『ありがとう、この恩は忘れない、私達は家族だ』
『『ハイ』』
何を言ってるか良く分からん発言への返事が、親父と被った。
それより完全にパニックになっている散華が気になる。
散華は最後の力を振り絞り、残りの足のロープに賭けた…しかしその最後の命綱の足が…足首から膝、足の付け根まで関節が外れた…様に見える。
涙を流しながら俺を見た散華…何か叫ぼうとしたした瞬間、エナメルの全頭マスクの様な被り物を付けられた。口には細い管の様な物がチョロっと出ているマスク…
『ありがとう…私を信じてくれて…』
同じく涙を流す各世…いや、お前は信じてねぇから…
一瞬各世に意識がいったが束の間、今度は散華母が散華のハイレグスーツ横に思いっきりズラした。
ちょっと散華の秘密の部分が見えているがそれどころじゃない、散華母がマヨネーズの容器の様な物を取り出し…散華のケツに向けて振りかぶった!?
多分の散華のケツに突き刺さっている容疑…刺さった状態で容器のなかを1ミリリットル残らず絞り出すように注入している…
散華の顔…マスクの形が変わる程動いている…見るに泣き叫んでいるように見える。
身体は五体自由が効かないにも関わらず凄まじい痙攣が襲っている。
『今日は1度帰って…貴哉の事を清算する…だからまた連絡するね』
『あぁ…ハイ』
おま、今日もやるんかい…というツッコミを入れたくなる程散華の容態が、ヤバい。
五体が動かず痙攣する散華を掴んで押し入れに戻る散華母…天井からのロープが押し入れに繋がった…
俺は…約3分間…何も出來無かった…散華母はアレだけ出来るのに…何故この間はカップうどんがどうしたとか言ってたんだろう?
〘午後1時12分19秒 計算出来ないカップうどん〙
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