第47話
私はコスプレ喫茶というものを完全に甘く見ていた。
いや、コスプレ喫茶に情熱を捧げる生徒たちを舐めていたと言った方が正しいのだろうか。
てっきり私は準備と言っても昼間に手伝った輪飾りをもう少し作り足して教室を飾り付ける程度と思っていた。けれど、この子達はどこからそのバイタリティが湧き出ているのか、衣装の自作までしていたらしい。
しかも担当している生徒がファッションデザイナーを目指しているとかで、明らかに遊びのレベルを超えているコスプレ衣装が…………。学園祭でコスプレ喫茶をやることになってから寝る間も惜しんで制作に励んだのだとか。
けれど、今はそんな衣装にとある問題が発生している最中。
「拙いなぁ、里穂って思ったより胸無かったんだね……ブカブカになっちゃった」
「ひ、酷い! あたしだって無いことは無いよ!」
「いや、でも自己申告より明らかに小さいよね……」
「まさか里穂がこんな下らない嘘を吐くとは……」
そう、下らない嘘だ。リホさんは衣装作りをする二人に胸のサイズを盛って伝えていたらしい……。
本人も嘘を言ってしまった罪悪感があったのか、素直に謝罪をしている。
「う……ぐぅ…………ごめん、なさい……」
苦労して衣装を作った二人からすれば怒り心頭になってもおかしくない事態、動向によっては監督官として喧嘩の仲裁に入ろうと身構えていたのだけれど、けれど二人の反応は淡白だった。
いや、むしろリホさんの反応を楽しんでいる。
「まあ、薄々気づいてたけどねぇ……それでCカップは無理あるよ里穂」
「だねぇ……なんで直ぐ気づかなかったんだろ。
「グハッ……⁉ 三波せんせー! クラスメイトから虐められます!」
「松風さん、反省してください」
「「アッハッハッハッハ!」」
クラスメイト二人からの口撃と私の裏切りによってリホさんは涙目だ。自分の胸を抑えてプルプルと震えている。
それにしても仲の良い子たちで見ていて微笑ましい。これぞ青春といった感じだ。
「今から手直しする?」
「パットでモリモリにすれば何とかこのままでも……」
「はぁ~~~、だからコスプレ喫茶なんて嫌だったんだよ……あたしに変な衣装着せて遊んで……」
二人の言葉で相当食らってしまったのか、里穂さんが珍しく愚痴を漏らしている。
「うっそだぁ、さっきまで里穂ノリノリだったじゃん。ホームルームが終わるなり張り切っちゃってさぁ、フフッ」
「そうそう、率先して衣装合わせに協力して。……まあこの有り様だけど……ぷふっ」
「あ、あたしが悪いから強く出れないけど、流石に怒るよ二人共…………。それに、あれはハルさ……ん…………ゴホン」
「はるさ?」
「なんて?」
「いや、まあ、ふ、二人が作ってくれた衣装が可愛かったから……」
「松風さん、似合ってますもんねぇ……アハハァ……」
今、絶対に私の名前を言おうとしてた。
私が、学園祭で近くにいれるようになって喜んでくれてたのかな……。
嬉しい、けど気をつけて欲しい……。
「わ、わぁ……ありがとー三波せんせー!」
リホさんの返事は酷い棒読みだ。
「いやぁそれにしても、本当に二人の作る衣装は学生の手作りとは思えませんね」
咄嗟に出た誤魔化しの言葉は、私に思わぬ飛び火を齎す。
「お、先生もコスプレの良さが分かっちゃいました? なら、先生の分も急遽作ってあげようか?」
「お、いいね! ちょうど生地が余ってたんだよねぇ。シンプルなデザインなら間に合うかも!」
「ま、待ってください私には荷が重すぎ――」
「いいね! やってもらおう!」
さっき二人に責められるリホさんを助けなかったからだろうか、どうやらリホさんは私の敵に回ってしまったらしい。
「か、勘弁してください……」
◆ 新作のお知らせ
皆さんこんばんは。真嶋です。
新作を出しましたので、宣伝をさせてください。
タイトル:
らぶおあらいく~【百合女子】を隠している私、今日も友人に翻弄される~
URL:
https://kakuyomu.jp/works/16818093076428125095
あらすじ:
舞台は女子高。
やたらスキンシップが激しいクラスメイトに翻弄される隠れ百合女子の主人公。
果たして友人は本当にノンケなのか、それとも……?
緩めの百合ストーリーにしようと思ってます。今回は女子高生同士の百合ラブコメ。
ぶっちゃけて言うと、『出会い系サイトで教え子を釣ってしまった』の執筆に詰まりまくって、気晴らしに書き始めた作品です……。
いや、こっちの作品書けよって感じなんですけど、書けないときって不思議と他のアイディアは溢れてくるんですよね……。
まあ、更新頻度は落ちていますが、打ちきるつもりはないので今後もこの作品は気長に楽しんで頂けると幸いです。
『らぶおあらいく』については、たぶん不定期更新になります(ストックがあるので、少しの間だけ毎日更新になります)。
是非読んでみて下さい!
それではー。
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