第五章 I will never grow tired of you
第41話
10月、秋真っ盛り。
私が勤める高校では、毎年この時期に大きなイベントが催される。
多くの学生にとっては待望の行事となるのだろう。
通称は
今はその準備期間で、今日から 5日間は学校で授業は実施されない。
3日間を準備期間、残り2日を校内開催と一般開催に分けて文化祭を実施する。
そんな中、教師である私が何をしているかと言えば、正直何もしていないのである……。
いや、正確には生徒たちが羽目を外しすぎて危険な事をしていないか、文化祭で実施していい範囲で催し物を用意しているかを確認するための見回りをしている。
しかし、問題行動をしている生徒というのは、そうそう居る者ではない。我が校の生徒たちは非常に清廉潔白な心を持っているらしい。
何とも健全で大変素晴らしい事なのだけれど、そうなると私は自動巡回するドローンの如く校内を無心でウロつくだけの存在になる。
「どうしましょう、暇です……」
思わずそんな言葉を漏らしてしまえば、後ろから思いがけず声を掛けられる。
「あら~? 三波先生、お暇なんですか?」
仕事中に迂闊な事を言ってしまったと焦りつつ後ろへ振り向いてみれば、そこには見知った生徒が立っていた。
リホさんとは仲が良いようで、頻繁に二人が共に歩いているところを見かける。
「吉村さん……こんにちは。えーっと……まあ、ちょっと手が空いてしまっているというか……」
別に悪いことをしたわけではないのだけれど、なんとなく気まずさを感じて言い訳がましい口調になってしまった。
「へぇ、じゃあ、ちょっと手伝ってもらえません?」
「えっ?」
「いやー、助かります! 飾り付けが大変で困ってたんですよ!」
私の返事を聞くこともなく、快活な笑みを浮かべた吉村さんは私を何処かへとグイグイ引っ張って行ってしまう。
「ちょっ、ちょちょ! ちょっと待ってください!」
「いいからいいからー!」
「何がですか⁈」
「アハハハハ!」
強引さがあるけれど不思議と嫌な気分にならない。
彼女は、リホさんと似ているようで少し違う魅力を持った子だった。
そういった経緯で、私はどういうわけかリホさんのクラスで出し物の準備を手伝う事になっていた。
なっちゃったのである。
「ハァアアア……。何してるのさ……」
教室で顔を合わせたリホさんからは、小さな声でそんなことを言われてしまう。
私だって、来たくて来たわけじゃないのに……。
リホさんは困ったような、呆れたような、それでいて嬉しそうな顔で私を出迎えてくれるのであった。
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