第40話
「リホさんは、私のどんなところを好いてくれていますか?」
「……ホント、そういうところだよ」
少しだけ呆れた顔になったリホさん。
流石に調子に乗りすぎてしまっただろうか?
でもいい加減に、リホさんからどう思われているのかちゃんと言葉を貰いたい。
「まだ、待たないといけませんか?」
ついうっかり、そんな言葉が漏れてしまう。
駄々をこねる子供の様で我ながら恥ずかしい。
咄嗟に言葉を取り消そうとしてたけれど、リホさんが先に動き出す。
彼女は私の頬に片手を添えて、優しい笑みで言葉を紡ぐ。
「背が高くて、シルエットがカッコいいところ。思ったことを真っすぐ口にしてくれるところ。思ってたより子供っぽいところ。あたしのご飯を美味しいって言ってくれるところ。髪をかき上げる姿が綺麗なところ。結構抜けてるところもあって、天然っぽいところ。……あとは、あたしを好きって言ってくれるところ」
彼女は、はにかんで笑う。
自分でお願いしておいて、私は彼女からこんな答えを貰えると思っていなかった。
予想外の言葉の数々に戸惑ってしまう。
「あ、……ありがとうございます。でも、天然じゃないですよ?」
「へへ、さっきの仕返し」
悪戯に成功したような顔でリホさんは笑う。
でも、やっぱりリホさんも自分の言葉が恥ずかしくなったようでプイッと顔を逸らされてしまう。
それを見て、思わず私は声を出して笑ってしまった。
「ふっ……ふふっ、あははは! 私たち、何をしてるんでしょうね?」
本当にどうしてこんなことになっているのか。
リホさんと薫さんの話から、随分と発展したものだ。
「もー! ハルさんが突然変なこと言い出すから! せっかく真面目な話してたのに……ふふふ」
文句を言いつつも、リホさんも笑ってくれた。
私が大好きな彼女の笑顔だ。
リホさんの過去の事は、全然軽い話なんかじゃない。
でも、それは過ぎ去った話でしかないとも思う。
今の彼女は私と笑ってくれている。
それでいいんじゃないだろうか?
過去の全部と向き合って、ケリを付ける。凄い事だろう。スッキリできるのだろう。
でも、世の中はそんなに簡単な話ばかりじゃない。どうにもならないことはある。
だけど、それでもいいじゃないか。
だって、目の前の松風里穂という少女は、こんなにも綺麗だ。
だから私は、彼女と今の話をしよう。
「リホさん……そろそろご飯にしませんか。お腹が空てしまいました」
「そーだね。あたしも、丁度そう思っていたところなんだ」
何かが解決したわけじゃない。
――それでも、私たちは前に進んでいるはずだ。
◆あとがき
これにて、四章本編は完結です。
予告なく更新が遅れてしまって大変申し訳ありませんでした…………。
もともと、第40話は書き終えていたのですが、三度に渡り全修正しました。
個人的にはこれが二人にとって最も自然な日常の形だと思い、ようやっと投稿できた次第です。
と、いうことで、ここからはお知らせです。
今後は、本作『【悲報】出会い系サイトで教え子を釣ってしまった』は隔日更新にしていこうかと思います。
理由としては、プロットを丁寧に練り直したいたいからです。
もしかすると筆の滑りがいいと毎日更新になったりするかもしれませんが、あまり期待しないでください……。
ではでは、そんなわけで今後ともよろしくお願いします。
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