閑話 原田静香の回想③
「は、原田先生……ここは、ご実家ではありません」
目が覚めた瞬間から絶望しました。
自分が何をしでかしてしまったのか、よく覚えています。
寝ぼけた私は三波先生を母と勘違いしたまま訳の分からない世迷言を……。
ああ、思い出したくもないです。
三波先生は何もなかったと言い聞かせてくださいましたが、自分でしっかり覚えています。穴に入りたいです……。
朝一からとんでもない失礼をやらかしてしまいましたが、その後の朝食はとても楽しいものでした。
本当に他愛のない話ばかりしていたのです。
朝はパン派か米派かとか、私の母方の実家から大量に食べ物が送られてくるとか。
仕事とは何の関係もないただの雑談。
三波先生の家で彼女が作ってくれたご飯を食べながらこんな時間を過ごすなんて、昨日までは全く考えもしませんでした。
恥ずかしいことも沢山あって、思い出しただけで悶絶してしまいそうな記憶もありますが、それ以上に幸せな気持ちにしてくれる大切な時間。
私の三波先生への恋慕はあっと言う間に積もり積もっていきした。
――しかし、私の恋はあっさりと打ち砕かれてしまうのです。
「えっ…………三波さん……?」
私と三波先生で、汚してしまったマットレスの代えについて言い合いになってしまった時でした。
一人の見知らぬ少女が三波先生の名を呼んだのです。
高校生らしきその女性は、三波先生と気心が知れた中なのか、軽快な会話を繰り広げていました。
私は、完全に蚊帳の外です。
どうしても三波先生と仲良さそうに話す少女のことが気になってしまう私は、堪えることができず二人の会話に割って入ってしまいました。
「あの、三波先生、この子は?」
「先生?」
すると、彼女は『先生』という言葉に何か引っかかりを覚えたようでした。
どうやら三波先生が教師をしていることをその少女は知らなかったようなのです。
二人はいったいどんな繋がりを持っているのか、彼女たちの会話から察するに『リホ』と呼ばれる方が関係しているようでした。
リホさんとやらがいったい何者なのか、そんなことに想いを巡らせていると不意に三波先生から言葉を振られます。
「こちらの方は、私と同じ学校で教師をしていまして……」
「ど、どうも、後輩の
咄嗟に自己紹介をすると、少女は私に挨拶を返してくださいました。
「私は、三波さんの……友達? の
社会人と高校生の友人というのは珍しく思いましたが、薫さんの反応からして、まだ彼女たちの関係自体はそこまで深いものではないのかもしれないとも感じました。
二人が友人であるというよりも、先ほどから話に上がっているリホさんとやらが、二人の間に縁を作っているのかもしれません。
そんな私の考えを肯定するかのように、会話を続けるうちに薫さんが衝撃の言葉を発しました。
「自分の彼女が別の女性を家に泊めてたら誰だって怒りますよ!」
もう、訳が分かりません。
私は堪らず三波先生へ説明を求めてしまいました。
すると、三波先生は突然落ち着いた空気を纏い始め、決定的な言葉で私を黙らせたのです。
「リホさんは、私が
こういうのを晴天の霹靂というのでしょうか。
三波先生はどうやら想い人をお持ちのようです……。
しかも、お相手は
三波先生が女性に想いを寄せている。
彼女の恋愛対象が女性ならば、もしかしたら自分にもチャンスがあったのかもしれない。
一瞬でもそんな考えがチラついた自分に虚しくなります。
しかし、三波先生は強い意志を持ってリホさんとの関係を発展させたいと考えていることが表情や声色から如実に伝わってきてしまいました。
そうして、どうやら自分の初恋は始まった瞬間から終わっていたらしいことが分かってしまったのです――。
彼女の優しさに嘘は無かった。
そして、私のこの気持ちにも嘘はない。
私の恋が叶わないのだとしても、彼女から受けた優しさをお返ししなくてならない。
心からそう思う。
彼女が私を助けると約束してくださったように、私も――――。
◆あとがき・宣伝◆
これにて閑話含めて第一部完となります。
いやー、ここまで毎日更新を維持できてよかった……。
皆さんの応援が励みになってました。本当にありがとう!
次回以降は『第二部 秋』です。
もしかすると、尺の都合で『第二部 秋・冬』になるかも……。
ついに学校で密会する里穂と千晴が書ける!
ただ、ちょっと問題がありまして、第二部の展開で詰めきれていないところがあるので、毎日投稿が途絶えてしまったりするかもしれないです……ごめんなさい。
そのときは、作者が展開に困って悩んでるんだなぁって思って応援してください。何卒よろしくお願いします。
とりあえず、内容が固まっている分については順次投稿していきます。
そんなわけで、今後とも『【悲報】出会い系サイトで教え子を釣ってしまった』をよろしくお願いします!
と、ここからは新作の宣伝。
実は、数日前から新しい作品を出しています。
タイトル: その配信に命を懸けろ~【悲報】TS転生したワイ、借金のカタに売られた極道の元で美少女VTuberをすることになってしまう~
作品URL: https://kakuyomu.jp/works/16818093073981661441
コメディ・ギャグを強めにTS百合作品を書いてみたくなって連載開始しました。
まだ始まったばかりなので、最新話までサクッと読めると思います。
良かったら読んでみて下さい。
ではでは、またね!
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