カップ麺が出来上がるまでに。
メラミ
***
ヨリトは三分以内にやらなければならないことがあった。
三分といえば……思い当たるのがカップ麺だ。
ヨリトはカップ麺にお湯を注いでいる。
次にスマートフォンのタイマー機能を使って、三分測る。
彼はカップ麺が出来上がるまでにしなければならないことがあった。
彼は役者をしていて、これから稽古場へ向かう準備をしている。
三分以内でできることといえば、なんだろう。
彼はまだ寝起きの姿でいる。服装もパジャマのままだ。
ヨリトは真っ先に腹を空かしてカップ麺に手を伸ばしたのだ。
朝食ってこんなにも大事なんだと、一人暮らしを始めてから気づいた。
・顔を洗う
・うがい
・着替え
このくらいなら三分以内でできるだろう。
カップ麺にお湯を注いだ後、スマートフォンのタイマーのスイッチを入れた。
1Kのこじんまりとした部屋の中でスマートに動き回る。
まずは顔を洗う。次に寝室でラフな服装に着替える。
ルーティンを忘れたことに気づき、洗面所に戻ってうがいをした。
スマートフォンを見た。
「まだ一分あんじゃん」
今日出掛ける準備は昨日確認してある。
台本と筆記用具さえあればいい。なるべく身軽な格好で稽古場へ向かいたい。
彼はカバンの中身を確認した。
確認をしたところでそろそろタイマーが鳴るのでは? と、スマートフォンに手を伸ばす。
「お、3、2、1……!」
彼はタイマーを見つめてカウントダウンを呟きながら止まる瞬間を待った。
そしてタイマーを切った。
「服装も完璧。そんじゃいただきまーす!」
彼は時間を待つ行為を楽しむことを覚えた。
滞空時間。三分以内にできることを考える。
それが面白いことでもどんなにくだらないことでも彼は考えるようになった。
時間を大切に。時は金なりという言葉があるように。
舞台の上に立っているときに観客を退屈させないようにと必死に自分のもがく姿を想像しながらカップ麺を味わっていた。
「ごちそうさまでした!」
カップ麺を食べ終えた後、彼は稽古場へ向かった。
カップ麺が出来上がるまでに。 メラミ @nyk-norose-nolife
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