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 中本たちが事務所に戻ると、横山と庄司も浮かぬ顔をしていた。

「ああ、所長。お疲れさまです。そちらもあまりいい情報はなさそうですな」

 庄司が中本たちの表情を見てそう言った。

「『そちらも』ってことは、庄司さんたちもダメでしたか」

「ええ。受け入れ業者は『私たちは入管に報告しただけ。オオタ加工からも失踪したと聞かされただけ』だと。入管にしても同じです。失踪の連絡は受けているようですが、数として計上しているだけですね。メモを取るようなことは、ひとつもなかったですよ」

 中本はそれを聞いて溜息を溢すと、自分が仕入れてきた情報を伝えた。

 その中でも、李の姉も失踪し、その結果自殺していたという事実は、横山と庄司にも衝撃を与えた。

「社長はそれを知っとったんやろうか。知っとって釣りに行っていたとしたら、えらい神経の持ち主ですわ」

 横山は嫌悪感を隠しもせずそう吐き捨てた。

「横山さん、例の事務員の女性に李さんの実家の連絡先を聞いてもらえませんか? 彼女なら調べて教えてくれるでしょう」

 中本からの頼みを聞いて、横山は早速松本にメールを出すと、程なく「明日調べて返信します」という返事が返ってきた。

「明日は石見海岸で聞き込みをします。横山さん、庄司さん、祥子さんと俺の四人で。事務所を九時に出発します。その間悠さんは事務所をお願いします」

 中本が明日の予定を告げると、「分かりました」とそれぞれが応えた。

「そうだ。私が今から、土曜日に水族館と石見海岸に行ってた人をネットで探してみるから、ちいちゃんに明日連絡取ってもらったらいいかも。ツイッターとか、インスタとか、ブログ探せば写真とかあげてる人いると思うんだ」

 祥子の提案に、悠も「うんうん」と頷いている。

「それなら退屈しなくてもよさそう。……あっ、別に普段暇で仕方ないってわけじゃないですよ!」

 悠は慌てて自分の失言を繕った。

「あーあ、言っちゃった。これでも前より電話鳴るようになったんだよ。私がここに来てすぐの頃なんて……イタっ!」

「……まだ触ってもいないじゃないですか」

 祥子の頭の上に振り下ろされた中本の手刀は、祥子の頭に触れる直前で止められていた。そして、その手が時間差で祥子の頭に落とされた。

「ああ! 酷い! パワハラです、パワハラ!」

「さて、今日はお疲れさまでした。明日も暑くなりそうですから、その準備はしておいて下さい」

 祥子の訴えを無視して中本は帰り支度を始めた。

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