発明

あかり

第1話

かつて、僕の隣の部屋には不思議で風変わりな友人が住んでいた。彼はいつも決まってアロハシャツを身に纏い、それが彼の内にある幸福を周囲に伝えてくれると信じて疑わなかった。彼の瞳は深く、時にはじっと僕を見つめ、僕の心の奥底を探りたがっていた。彼の朴訥な表情と、ロンドンのモダンと伝統が混在する街並みに合わないその風体が、僕は好きだった。

彼には、毎日庭で金属や木材を駆使して何かを発明するという、さらに変わった習慣があった。ある時、彼の作業について尋ねたことがある。

「世界を変える発明をしたいんだ」と彼は言った。

「世界を? それは素晴らしい目標だけれど、どうして? 名声を求めて?」

「いや、名声なんてどうでもいい。もっと大切なことを成し遂げたいんだ」

僕には彼の作業台は単なるスクラップの山に見えたが、彼はその中に未来を見ていた。


「ついに出来上がった!」

ある日、彼は興奮して僕を起こしにきた。彼が発明したのは、重厚な金属製のヘルメットで、そこから伸びる無数の電気コードが眼鏡に繋がっていた。

「これを使えば、人間の心がわかるようになるんだ」

機械を装着する彼を半信半疑で見守っていたが、彼は私の考え、次の行動を完璧に言い当てた。彼は本当に、人の心を読む機械を発明したのだった。


しかし、数週間後、彼は姿を消した。残された手紙にはこう書かれていた。

「僕は宇宙に旅に出る。僕が作ったものは人間ではなくエイリアンの気持ちがわかるものらしかったんだ」

彼の几帳面な筆跡は続く。

「でも僕が君の気持ちがわかったのは機械のおかげじゃない。君の友人だからだよ」

もちろん僕はエイリアンなんかではない。しかし、彼が残した優しいジョークに、どこか遠い宇宙でも誰かが笑ってくれることを願った。ふと鏡に映った自分の顔を見ると、薄っすらと見慣れない紫の模様が浮かび上がっていることに気がついた。僕は彼が何を発明したのか、ついに理解したのだった。

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発明 あかり @WHfsb

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