第8話 ダブルデート

乙女の重き愛#1

【6月1日 16:15 p.m. 東京都――渋谷区】


「……」


「皆、そんな冷ややかな目で見ないでくれ」


放課後、机の上に綺麗に並べられた中間テスト、その机の周りを同級生のコトネとアカネと正樹がジト目で俺ごと囲んでいた。


それもその筈、テストの点数が振るわなかったからだ。


「追試……多すぎじゃね」


「えぇ数学、物理、古文、世界史、情報、……これ、詰んでない?」


決して成績の良くないアカネまで驚くこの始末、コトネ何か笑えるぐらい冷たい目で見てくる。


1学期から前途多難……こうなったら誰かに勉強の面倒を見てもらう他無い。


普通であれば、テストで出た所を勉強すれば問題無いが、如何せん物覚えが劇的に悪いことを自覚している。


決してバカという訳ではないのだ、ただ物覚えが悪いだけで……


「つか、平均点越えてる教科無くね?」


「……」


正樹の全くもって悪気の無い無邪気な一言に、俺は思わず窓から差す光に救いを求めていた。





【6月1日 18:20 p.m. 東京都――渋谷区 自宅】


結局なんやかんやあって3人集まって、俺に勉強を教えてくる。


とは言え、1年の基礎が出来ていない為、まずは手っ取り早く簡潔に分かりやすいよう、ラミィに伝えるが……


「えぇっと、サイン、コサイン、……何だっけ?」


「タンジェント、お前そこからかよ」


そもそも物覚えが悪い為、基礎すら詰んでいた。


約2時間やって成果は無し、これでは3人の教えが役に立っていないのは明白。


正直これ以上やっても意味が無いような、そして時間も時間という事で、アカネと正樹は帰っていった。


「お前は良いのかよ?」


「私はラキューのお目付け役だからね、それに今日は親帰ってくるの遅いし」


「はぁ~勝手にしろよ、つかお目付け役がテレビつけて寛ぐなよ」


コトネはまるで自分の家かのようにテレビをつけだし、番組をちょっと見てはチャンネルすぐに変えていた。


するとある夕方のニュース番組のニュースを聞いていた、ラミィの手が止まる。


「先週から続く建物の崩壊について、政府はテロ組織によるものではないと発表しました」


「政府は――」





「ほんと物騒よね、自然に崩壊するなんてあり得る?」


「……さ、さぁ(やっぱりあの世界の出来事が現実に影響しているな)」


「……!(これからは戦い方も考えねぇと、こっちで被害が更に出ちまう!)」


「お?急にやる気になったね、どしたの?」


コトネの問いを無視して、ラミィは目の前のことに集中しだすのであった。

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