誕生と消滅#3

"必殺アクション"『レオン/バスター』


先程とは違い、剣先を地面につけない抜刀の構え。


獅子の目は確実に半壊の巨蟹を捉えていた。


全身にビリビリとプラズマが発生するキャンティに向かい、剣から白く長い発光を放ちながら全速力で駆け出す。


優に20mという距離を一息で踏み込み、一気に剣を払う。


狙いは右脇腹から左肩にかけての胴体切断。


瞬間、世界が真白に染まる。


ラミィは思わず腕で顔を覆いながら、目を逸らした。


「ガ――ッ……」




それは建物もろともキャンティの右腕を切断し、胴体をも真っ二つにしていた。


ゆっくりと崩れ行く建物の残骸に飲まれながら、キャンティはカクついた動きで首を動かし、主である剛三のいる場所を見つめる。


その様子を見ていたラミィも、彼のいる場所を見る。


「ゥァァ……」


「マジ……かよ」


彼も同様、胴体が真っ二つになっており、下半身は柵に突っ掛かっており、上半身に至っては建物の屋上から地面へと落下していた。


ディスクに表示されているHPは0――


彼のことを一目見たキャンティは、残骸に埋もれながら機能を停止した。


「こ……こんな……ところで――」


「ゲームオーバーだ」


またしても全体に響くようにしてG-Zoneが無情にも言い放つ。


そして剛三の体が無数の泡となって霧散し、やがて消えていった。




「プレイヤー紫波剛三が死んだことにより、残りのプレイヤーは次のゲームが始まるまで、それぞれ元いた世界に帰還してもらう」


すると全身が光始め、一瞬にして世界から消えていった。




「――ハッ!!?」


荷物を持ったまま立ち尽くしているラミィに対し、横を通りすがりながら不思議そうに振り返っていた。


先程のような歪んだ世界ではない、ここは紛れもなく現実世界だ。


人々の歩く音や話し声、車の排気音や電車の音も聞こえる。


【5月19日 18:26 a.m. 東京都――渋谷区】


時刻が全然進んでいなかった。


「何で1分しか進んでいないんだ!?」


体感的にもっと長くいた筈、無限にも思えたさっきの戦闘が、現実世界ではものの1分しか進んでいなかった。


何故時間が進んでいないのか考えていると、スマホの着信音がズボンのポケットから鳴る。


取り敢えず考えるのをやめ、歩きながら電話に出る。


姉からの電話だ。


「今日早めに仕事終わったからもう帰るわ、あと忘れずに買ってるでしょうね?」


「あっ?あ、あぁ!買って今帰ってる途中」


「?……ならいいわ、じゃ」


向こうから通話が切られ、無造作にスマホをポケットにしまう。


「……(マジでどうなってんだよ)」

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