第31話 最悪のシナリオ


「バカな事は止めなさい!! 何をしているの!! 」

二階にいる夫婦は同じように叫んだ。

「だってこの動物可愛いじゃない! 遊んでって言っているみたい!! えーっとリスの次は・・なんでカエル? 」

手すりの彫刻の順番を楽しみながら、まるで公園の遊具の上を歩いているようだ。


「そういえば、さっきの男性、彫刻に触っていたわね、ミント! 」

ミントはマリの言葉に応えるよりも、

「危険です、すぐに止めてください」と続けながら、マリの予感があまりにも正しかったことに少し恐怖さえ感じた。

あの日、マリはこう言った。


「そうよ、ここで誰かが大けがをすれば、人が大勢入ってくる。命は最優先だから、ミント、あなたの強制力は解除される。一定時間は人が許可無く出入りして、「どさくさにまぎれて本を持ち出す事」が出来るようになる」

「でもどうやって? 吹き抜け部分に向かって、突き飛ばすのですか? 」

「そうね、それが一番単純だけれど、そうするとその人は人殺しになってしまう。そんなことはしないとは思うのだけれど、でもとにかく「緊急事態」を起こすことを考えている。そうすれば・・・・」


「止めなさい!! 」「何やっているんだ!! 」「落ちたら死ぬぞ!! 」

誰もがそう言っているが、もちろん言葉一つ発しない男性が一人、じっと綱渡りをしているような息子を見つめ、「僕が上に行ってきます」

「お願い、止めさせてきて! 」と言う会話のあと、彼は急いで階段を登り始めた。

「もう少しで終わるから! 」本人だけは楽しそうで、あと確かに動物が二つ残っているだけだった。

「えー これ何の動物? 丸っこい! 魚? 」

動物の背中に乗った途端、完全に滑り、体はバランスを崩した。


「危ない!!! 」

マリも叫んだ。


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