第23話 勝負の朝


「おはようミント・・・」

これはミントがこの部屋で起きるスイッチだった。ミーちゃんと言い換えるべきか迷ったが、ミントもそのことには触れる事無く、いつものように朝の挨拶を返し、一日は始まった。

 朝ご飯はマリが自分で作るようにしている。最近はちょっと凝った感じにしていたのだが、しばらくはそんなことも出来そうにない。しかし

「朝は暖かいものを必ず食べなさいって、お母さんからもさち先生からもいわれていたの」

「良いお母様です、ですがさちにそのことをしつこく言ったのは私ですよ、マリ」

「本当?  フフフ!! 」

「マリ、出来ればいつものように食事をしてください。極端に短くなるようなことも無く、やはり健康のためと・・・・」

「わかったわ」

ミントは何か重大なことを自分に伝えるのだろうとマリは思った。そしていつも通りテレビで天気予報や時事報道を見たあと、重大な事が知らされた。


「私の嗅覚の異常は、完全に管の詰まりです。原因はよくわかりませんが、洗浄は業者に頼みます。そして本題です。総司令部内で、昨日の私達の動きを監視していた人物が浮かび上がりました。一年ほど前から急にギャンブルにはまってしまったようです。それも仕組まれた風に」

「でも私達の事覗くなんて、少し愚かね、証拠が残るのに」

「総司令部にいるのですから、元々頭は良いのですが、完全に冷静さを欠いています。不安からでしょう」

「そうね、悪いことをしているときっとそうなってしまうのよね。で、あの無くなった一巻のシリーズがターゲットになる可能性は? 」

「現在の所23%です。あの本のレプリカの所有者は全宇宙に千人以上います。その中でも熱心なコレクターは百人ほどに絞られます。どうしても欲しいと言っている人物は十人、彼らは非合法なコレクターと言っても過言ではないでしょう」

「地球時代、貴重な野生動物を狩ったりしていた人達の子孫かしら」

「手に入れがたいものを得たいと思うのでしょう、そういう人達です。ですが・・・」

ためらいがちなミントの声にマリはすぐに答えた。

「大がかりな窃盗の可能性も考えられるという事ね。目的の本を狙うのではなく、手当たり次第的に。百年前に完全に失敗して、最近は実行する前にことごとくさち先生につぶされているのに、懲りないわね」

「ええ、ですが「同じ防御方法」では無理かと思われます。あの時の最新鋭の脳波コントロールも、今ではレアな機械です。百年前の防虫の煙は強力な睡眠薬入りでしたから。一旦眠ったふりをしていた巫女の演技力は見事でしたよ」

「その話は何度聞いても面白いわ。でも・・・何だろう・・・今回は・・・・」

 しばらく部屋は沈黙した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る