第21話 特別奨学生

 マリは成績も優秀な方であったため、学校の先生に「大きな図書館の司書になりたいので、他の星で勉強がしたい」と相談を持ちかけると、星の奨学生の候補者に推薦してくれた。

「丁度良かったです、この星の奨学生の数が今年度から増えたから。

きっとマリなら大丈夫ですよ」と言われた。本好きの女の子なのだから、学校の先生をやんちゃに困らせるような事はするはずもない。そんなことより本を読んでいたいのだから。

 話しはもちろんトントン拍子に進み、書類上、図書館星の司書の養成学校に行くことになった。

「マリ!! すごい!!! あなたの書いた文章で、先生方とAIがあなたを特別奨学生に選んだんですって!! 入学の準備、学校生活の衣食住、全て保証されるのよ! 年に一回の里帰りの旅費も出してくれるの、すごいわ!! 」

だが、このことよりも、マリが本当に中学生らしく安心したことがあった。


「うちの学校で特別奨学生が二人だなんてすごいよな」


学校中の話題になっていた。もう一人の奨学生は、明らかにある分野で「次元の違う人」で、マリはもし自分が選ばれることで、この同級生が選抜に漏れてしまったらどうしようと思っていた。家庭環境が似ていたため時々話すことがあり、その時にはとても理路整然と、また家族にもとても優しいと思える生徒だったが、他の人からは「言動がちょっと変な人」として見られていた。

 奨学生のことで、二人で先生のところに行き、何枚かの手書きが必要な書類を渡されたとき、マリは、ちょっと気まずく思った。仕組まれた自分と、相手の能力、可能性を単純に比較したときに、やはりどこか申し訳なく思ったのだ。

だが、意外にもこう言ってくれた。

「マリが選ばれて良かった、星は違うけれど、これから頑張ろう」同級生の言葉は、本当にうれしかったのだが、あまり長く一緒にいて「連絡先を教えて」と言われても困るので、急ぐようにその場を立ち去らなければいけなかった。 

 一人暮らしとなるため、色々な用意がやっと終わり、星を離れる数日前になると、マリは一人で近所を散歩するようになった。そんなある日、ふとさち先生が前からやって来るのが見えた。会うのは二度目なのにも関わらず、マリは懐かしさと、嬉しさとで、笑顔になっていた。

「さち先生! 」生徒のようにそう呼ぶマリに

「まあ、嬉しいわ、学校の先生になったみたい」

さちも笑った。



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