第19話 状況という選択肢
「私が誰だか、もうあなたにはわかっているかしら」
十代半ばの女の子に、人生の選択を迫るにしては、かなり乱暴な言葉だったとさちは反省したのだが、マリにとってはそのあとの自分の言葉の方があまりにも劇的すぎた。
「図書館の巫女・・・」
マリも自分の呟いた言葉の後に、丁寧な言い回しも加えることは出来なかった。
もちろんマリは何度も想像を巡らせた。何故女性なのか、何故一人なのか。それは全て、貴重な本を守るために最終的に行き着いた結果なのかと。
以前はきっと男性も、またその大きさから複数人いたはずである。だが男性はどうしても性的欲求、趣味、ギャンブルへの没頭が女性に比べて強い人間が多い。それが優秀さと切っても切り離せない事ではあるが、危険度は多くなる、人数が増えれば増えるほど。そう、「誘惑」は昔からあるのだ。図書館の本を喉から手が出るほど欲しい人は宇宙中に沢山いて、それを仲介する、手段を選ばない人間も必ずいる。図書館の管理者に近づき、罠を巧妙に仕掛け
「1ページだけでも良いんです、そうすれば・・・」というある種決まり切った方法を取る。追い詰められた人間は言うままに操られ、ページはすぐに本となる。
また、ほぼ同じ事の繰り返しは、女性の方が向いているとも言われている。「巫女の誕生、存続」は性の差別、つまり女性に押しつけられたものでもあるが、単純な過ちとも言いがたいとマリも結論づけていた。
「巫女と言うには、私はもう年を取ってしまったわ。そしてこの仕事を引き継ぐ人を捜していたの、何年かかけて、そしてあなたの所に来たの」
マリはその時「光栄」という、どの色でもないが、まばゆいばかりの衣をまとった気がした。
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