第13話 永遠の管理者
最大限の許可を与える者、それは「ミントとは別の存在であるという、明確な否定」は巫女達には出来なかった。このことに関しては歴代知らされておらず、巫女の上の「神官」のような存在であるが、その神官は、自ら力を行使することは出来ないようだった。だがそのことよりも、マリは今直面している大きな危機に対して、自分が出来る最大の防衛を行うしかないと、この神官の事は将来的にも考えないで良いと判断した。
図書館の防虫、ネズミ駆除は年に二回必ず行われており、もちろん業者の厳しい選定などがあるが、ある種「急な依頼」であることが多い。
それは特定の業者などに依頼し続けた場合、本の窃盗団などが従業員に接触してくる可能性があり、過去に実際あった。セキュリティーは何重にもあるが、破る手立ても同じように開発される、まさにイタチごっこなのである。
故にある巫女が画期的、かつ面白い手立てを考案した。遠く離れた星の駆除会社に社員宇宙旅行をプレゼントする、別の星を巡りながら図書館星によってもらい、仕事をしてもらうのだ。しかしこの旅行プレゼントを総司令部が行うと、図書館での仕事とばれてしまうので、不定期で、別の企業がキャンペーンで行っている風を装う。デメリットとして費用がかかりすぎるため、毎年行うことは出来ないが突然の方が安全性は高い。だがこのやり方もそうではなくなってきた。悪いことを考える人間というのは、本当に、悪い意味での行動力が素早く、適応能力も高く、彼らが「常に複数の業者と接触」している事を突き止めた。そう、それが「さち」であった。
彼女の現役時代、本の愛好家は爆発的に増え、当然本の価値はうなぎ登りに上がった。個人蔵の本の窃盗が多発し、この図書館は「誰もが知る密集した宝の山」以外の何物でも無くなった。ゆえに絶対に大丈夫と思えた「年に一回の一般公開」でも窃盗が起き、最後の機械的セキュリティー通過後、実際のボディチェックを行った警察により逮捕された。もちろんさちとミントの監視からであるが、この人物の手際の良さに、二人はちょっと関心までしたほどだった。
「警察資料の印刷を行います。犯罪者の写真はどうしましょうか」
「どうした方が良いかしら、ミント。印刷をしたら時間がかかって、私がやっていると思われるかな」
「警察内部にそのことを確認、気が付く人間は、今の所数人います。ですが警察も今大きな事件を抱えていますので、私達の事にまで気が付かない可能性が大きいでしょう。あなたのアクセスがわからないよう、警察の管理者と私が話しをしましょう」
「あなたの同業者ね、ミント」
「その人物の「ぼやき」を聞いていただきますか? 」
「ええ、私が聞いて良いことであれば」
「私を「うらやましい」というのは毎回なのです。ですが最近、言って良いことではないのですが・・・「もう死にたい」と、ちょっと冗談っぽく」
「大変、休暇を与えてあげないと」
「そうですね、疲れ切っていますから」
警察のAIの方が何倍も大変であることはわかっていたが、余りに深刻で可愛そうに思えた。するとミントが
「しかし、私の友人のためにも事件は未然に防ぎましょう、それこそが我々に出来る一番の事です」
「そうね、ミント」二人は仕事を続けた。
数時間後、調べ上げた事実に二人は驚愕した。ネズミ防止のネットは簡単には破れないよう年々改良されているが、窃盗団は「歯の強いネズミ」を育て上げ、図書館の近辺に放していること。総司令部にある「安全な駆除会社」のリストの流出、そしてどうも年齢を含めたマリの情報まで知っている様だった。
巫女の経歴は最重要機密である。しかし生きている人間である以上、人から見られることもあり、感の良い一般人という人もいる。宇宙図書館近くの喫茶店では「巫女を見た」という話しをする人もいて、こういう人には居合わせた司書が内々に「話さないようにしてください」とお願いすることがある。
そしてその喫茶店にほぼ入り浸っている人物が目にとまった。図書館は街の中心部から離れた所にあり、この周辺には宅地も少ないため、来る人間は限られている。喫茶店が好き、本が好きで図書館に通っているようには見えない。店員さんとは普通に話しているが、どうも違う。今朝、お客さんにまぎれていたさち先生が醸し出していた雰囲気、それと似て非なるものを感じた。
「ミント、この人・・・さち先生が危険人物って教えてくれて人とは、顔が違うようだけれど」
「ええ、調べています。何度か整形手術を行った箇所があります。
しかし骨格から判断すると、多分彼はさちが「戦ってきた人間」です、きっと体内のマイクロチップも書き換えて交換しているでしょう」
マリは少しうつむき、拳をぎゅっと握った。
ミントはそんな姿を初めて見た。
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