第8話 高性能と感
「ただいま、ミント」
「お帰りなさい・・・マリ」
マリはこの自分達の会話が、全くの逆のようだと少しおかしかった。自分のただいまは機械的な感じであり、ミントの声も、そのトーンも、言葉の間も、感情が複雑に絡み合ったものだったからだ。
「ミント、私今からシャワーを浴びて、図書館に入りたい、良いかしら? 」
「シャワーを浴びて? ほこりを落とすためですね」
「それと、今日買ったばかりのカッパを着ていった方がほこりが立たないかしら? それとも普通の服の方がいいかな? 」
「展示されているものを買われたのであれば、かなりのほこりは付着していると思いますが」
「ビニールに入っていたからそれは大丈夫かもしれない」
「でしたら、そちらの方が良いでしょう」
「急いで支度をします、ごめんなさい、一度完全にロックをかけたかもしれないけれど」
「いえ、実はこんなことがあるかもしれないと思い、いつもの所はまだ開けたままです」
「ありがとう! ミント! 」やっと明るめの声がマリから発せられた。
本当は、「ミーちゃん」と楽しく話すことはいっぱいある。でもそれを押し殺し、いや押し殺さなければいけないと、何かが、強烈に言っている。自分なのかどうなのかわからない。シャワーを浴び、普通の服に着替え、髪を結び、ズボンと上着に別れたカッパを着た。そしてフードまで被った姿をミントがみると
「フードまで、マリ? 」
「髪の毛が落ちたら困るから、いつもは帽子かスカーフだけど」
そうして廊下を早足で歩き始め、真正面の大きな扉をマリは自分でいつものように開けた。
今までとは全く違う気持ちで。
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