7/31③ ボクのターン

 二日目 7月31日12:35


 サイコパス殺人鬼阿久津蓮也あくつれんやから救出された皆川賢人ボクは、警察の事情聴取を受けていた。

 聴取が終わり、玄関ホールへ行くとボクの家族が心配そうな顔で待っていた。


 なぁーんてねっ!キャハッ♪

 ふむふむ……あれが皆川みなかわ家の皆さんか。


 いよいよ、皆川賢人ボク(阿久津蓮也)のターンだ!


「お兄ちゃん!」

「おっ……と」

 駆け寄り、抱きついてきた女の子……妹?!歳の頃は小学5~6年生ってトコか。まあ、ガキには興味が無い。早めに片付けるか。


賢人けんと!大丈夫なの?怪我はないの?」

 ほほぅ、いいね!美人ママってか!

 うーん、○したい……いや、まだ我慢だ。


 ボクのハッピーライフはこれから始まるんだ!ボクは○しを楽しむ、責任は阿久津蓮也(皆川賢人)が負う。


 うーん、最高だ!!


「賢人、大変だったな。洋介君は……残念だ。さあ、家に帰ろう」

 ほぅ、眼鏡のインテリ系パパさんね。

 むむ、しかし、二の腕がヤケに筋肉質……なるほど、賢人君に空手を習わせたのはパパさんって事ね!

 いいじゃん!がある!!


 へぇー、中々の高級セダン車だ。

 賢人ボクは、そこそこお坊ちゃんなんだ。

 しかし、車内が静か過ぎる……

 なるほど、ボクに気を使ってるって訳か。


「あの……皆、ボクなら大丈夫だから」

 ここで、苦笑いでも浮かべておけばいっかな?

「あれ?お兄ちゃん『ボク』なんて使ってどうしたの?」

 あ、やべっ……賢人君は『オレ』だったか?

「あ、えっと……何か色々あり過ぎて皆と久しぶりに会ったような感覚でさ。なんか緊張しちゃった」

「そうか、そうだよな。萌衣もえ、お兄ちゃんは疲れてるんだ。皆でいたわってあげよう」

「はぁい、パパ。ごめんなさい」


 妹は、萌衣ちゃんね。

 忘れないようにしないとね。


「さあ、着いたわよ。賢人、お腹空いたでしょ?母さん食事用意するからシャワー浴びてらっしゃい」

「あ、ありがとう……母さん」


 へぇー、庭付き一戸建て。

 高級住宅街ってか……いいね、うん。

 さてさて……バスルームは、どこかな?廊下を右か、左か……?

 あっ!こりゃ、あれだね……分かってるよ。下手に動くと「賢人どこへ行くの?バスルームはこっちよ」ってパターン……。

 よし、ここはひとつ!


「も、萌衣、洗面所行かないのか?まだ手を洗ってないだろ?」

「あ、そうだった!じゃあ、お兄ちゃんと一緒に行こうっと」

 よっしゃ!ボク、天才かも?


「ふぅ、母さん、美味しかったよ!ご馳走様」

「良かった、賢人の笑顔が見れて」

 シャワーも浴びて、飯も食ったし、後は部屋だね。


「じゃあ、ボ……オレ、部屋で休むね」

「あ、じゃあ私も部屋に戻る!宿題しなきゃ!お兄ちゃん一緒に上がろう」

 おおっ、随分とブラコンだねぇ萌衣ちゃんは。助かるわ。


 どれどれ……部屋の中は……

 机、ベッド、キャンプ用品に鉄アレイ……なんだよ、つまらない部屋だな。テレビも無いのかよ。

 まあ、今はスマホ1台で何でも完結しちゃうからねぇ……あ、そうだ!スマホのロックを解除しないとね。うーん、パスワードな。こいつは少々厄介だな……

 まぁ、皆川君頭悪そうだし誕生日とかでしょ……どうせ。

 鞄の中に学生証とか入ってるかな?あったあった……では、暗証番号を解読しますか!


 ……


 ……


 ……


「ぷっ……キャハッハッハッ!いや想像以上のおバカだねぇ。まさかロックしてないとか、こりゃやられたよ」

 おっ、着信履歴がいっぱいじゃないか!

 友達が多いんだねぇ、皆川君は。

 まあ、面倒臭いから放置な。

 そういえば、が無いと遊べないね……そうだ、キャンプ用品。

 あったあった!

 うーん、いいナイフじゃないか! 見直したぞ、皆川君!


 コンコンコンッ


「お兄ちゃん……」

「あ、えっと……萌衣どうしたんだい?」

「ねぇ、久しぶりによ?」

 顔近っ……

「え?しようって……何を?」

 おいおい、どういう関係だ?この兄妹は?

「じゃーん!ゲームぅ!」

「あ、ああ……ゲームね」

「スラッシュ・ブラザーズで対決しよう!」

 ス、スラッシュ……?

 いやいや、ボクはキミをしたいんだよなぁ……


 コンコンコンッ


「こらっ、萌衣!宿題はどうしたの?部屋に戻りなさい!」

「あ、ママ。……はぁい、じゃあまた今度ね、お兄ちゃん」

 いやぁ助かったぜ、美人ママさん!


「賢人、今夜行くんでしょ?洋介君のお通夜」

「お、お通……夜?めんど……いや、勿論だよ!」

「礼服無いでしょ、お父さんに借りるから下へおいで」


「アナタ……」

「ん?なんだい美咲みさき

 ほぉう、ママさんは美咲ちゃんって言うのか。後は、パパさんの名前だけだ。


「礼服だね。賢人、このジャケット羽織ってみなさい」

 何でこんな服着なきゃないんだ?ったく……

 おっ!これは!名前入りの内ポケット!

 皆川賢治けんじ


「ありがとう!父さん!」

 皆川賢治、美咲、萌衣……マイファミリー!なんてねっ


 キャハッハッハッ♪


「じゃあ、そろそろ行くね」

「暗いから気を付けてね」

「うん。じゃあ行ってきます、母さん」

 チッ……面倒臭いが何か情報を得られるかもしれない。

 ついでにでも、見つけてきますか。






















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