第7話 幸福な夢

 ボクはなるべく高い所に登って眠った。

 アタラシイイエダヨに似た建物が沢山あった。

 その上に登って眠るのが一番安全なんだ。


 アタラシイイエダヨにいた時も、召使いが帰って来るまで登っていた。

 上にいれば召使いが帰って来るのが見えて、すぐ気付くからだ。

 昼間は日の光もよく当たって、温かいってのも理由の一つだ。


 召使いが帰って来たので、すぐ降りたいのに、降りられない。

 だから大声で、僕はここだよー、って召使いを呼ぶ。

 高い所にいるボクを見て、召使いは少し困った顔を浮かべる。


 召使いはボクを置いて、アタラシイイエダヨの中に入って行く。

 ボクは大慌てで、待ってよー、僕はここだよー、って叫ぶ。

 すると何か物音がして、ベベ、ベベってボクを呼ぶ声が聞こえる。


 それから、ボクのすぐ下で、何か物音がするんだ。

 音がした方を見ると、目の前で何かが動いている!

 大好物のスルメだ、スルメが右へ左へ、動き回っている!


 ボクはスルメを追って、手を伸ばす。

 スルメはなかなか捕まらず、だんだん遠ざかる。

 ボクはスルメを捕まえようと、目いっぱい手を伸ばす。


 その時だ。

 下の方から、召使いの手が伸びて来て、僕の手を掴んだ!

 と思ったら、ボクの体は宙に放り出され、咄嗟に身をひねる。


 気付くと、ボクはアタラシイイエダヨのすぐ外、地面にいるんだ。

 何が起きたのか、よく分からないけど、玄関の方から声がする。

 ベベ、ベベ、大急ぎで声の方へ行き、大好物のスルメを食べる。


 ハッと目が覚めた。

 ボクは、アタラシイイエダヨに似た建物の上にいた。

 最近、あまり眠れなかったけど、疲れてぐっすり眠っていた。


 ボクは建物の上や、狭い石の上を通って、どんどん先へ進んだ。

 食べ物は美味しくないし、夜もあまり眠れなかった。

 早く温かくて甘い場所へ帰りたい!

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