第5話 安全な住

 大きくなると、色々興味が湧いてきた。

 特に気になっていたのが、透明な壁の向こう側だ。

 何かが動いているのが見えたんだ。


 ソトニデタイノ、またはソトノセカイ。

 それが合言葉だった。

 ボクが興味津々でいると、そう言って召使いはドアを開けた。


 ソトノセカイは、刺激的で、とっても楽しいんだ!

 でも時々、空や茂みの中から敵が襲って来た。

 アタラシイイエダヨの中の方が、安全で安心の場所だ。


 召使いどもが、アタラシイイエダヨからいなくなる時間。

 ボクは常にソトノセカイに放り出されるようになった。

 アタラシイイエダヨの中の方が好きなのに、追い出されてしまった。


 召使いどもが帰って来るまで、遊んでいるか、ボーっと待っていた。

 入り口のすぐ近くにいれば、召使いの足音で分かる。

 帰って来た、と思ったら、大急ぎで玄関へ行くんだ。


 少し遠くで遊んでいて、足音に気付かない時もあった。

 そんな日は、召使いが玄関で、ベベ、ベベ、って呼ぶんだ。

 どうやらベベってのは、ボクの名前みたいだ。


 ここでの暮らしは快適だった。

 召使いが出すカリカリは、味も匂いも良くて全然食べ飽きない。

 大好物のスルメは、たまにしか食べられないご馳走だ。


 優しい毛繕いは、ママの感触を忘れてしまうほど心地良かった。

 召使いの膝の上は、とっても温かくて安らぐ。

 夜眠る時も、召使いの横で丸くなれば、何一つ身の危険がなかった。


 暑い季節になっても、毛が重くならなかった。

 それは、ボクを水責めで虐待してくる効果だと気付いた。

 だからといって虐待は許さない、ボクはその時だけ必死の抵抗を試みた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る