第4話 美味な食

 それから数日は、同じような事件が起きた。

 敵がいなくなった時は、白い水で腹を満たした。

 不思議なんだけど、この水は飲んでも翌日にはいっぱいになるんだ。


 暗くなると小さい二匹が、いつもボクを捕まえようとした。

 時々捕まっちゃうけど、食べられず、ボクをイジメるだけ。

 少し体のあちこちを触り回して、満足すると解放された。


 これはイジメているのだろうか?

 なんだか温かくて、少しだけ懐かしい感じもするんだ。

 まるで、ママがボクの身体を舐めて、綺麗にしてくれているような。


 それと、もう一つ気付いた。

 いつも体が痒くて、体のあちこちを噛んで痒みを取る。

 それが、拷問を受けた後、少しだけ痒みがなくなる気がした。


 ボクを誘い出すために使われた、良い匂いの正体。

 それが何かは分からないけど、敵はボクにそれをくれる時があった。

 おっきい生き物は、それをスルメと呼んでいた。


 呼び方と言えば、奴らはボクを誘い出す時。

 それにボクを虐待する間も、よくベベ、ベベ、って言う。

 ベベ、ってどういう意味だろう?


 あいつらは敵じゃないのかも知れない。

 何度捕まっても、ボクは命の危険を感じなくなった。

 逆に、ママと一緒の時のような温かさと心地良さがあった。


 甘くて美味しい食べ物をくれた。

 あの不思議な白い水は、あいつらが持って来るんだ。

 大好物のスルメも、カニカマと呼ばれる物も与えてくれた。


 いつしか、ボクは隠れて暮らす必要がないのだと気付いた。

 逆にあいつらが、いや、あのニンゲンと呼ばれる生き物が。

 アタラシイイエダヨに戻ってくるのを、心待ちにするようになった。


 ニンゲンが帰ってきたら、ボクは飛んで行って甘えた。

 するとニンゲンが、ボクのために食事を用意してくれるんだ。

 ボクを食べるんじゃなく、ボクに仕える召使いだったんだ!


 アタラシイイエダヨの中は、いつも温かくて快適だ。

 召使いどもは、ボクが欲しい時に食事を出した。

 普段はカリカリとした、とっても香ばしくて美味しい物を。

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