第3話 巧妙な罠

 ものすごく良い匂いがする!

 何だろう、この匂いは、たまらんっ!

 すぐ目の前、手の届く所で、何かが蠢いている!


 右、左、右、左……細長い何かが、ボクを誘っている!

 これを捕まえれば、ボクはご馳走を手に入れられる!

 右、左、右、左……タイミングを見計らって、ボクは隠れ家を飛び出す!


 それは巧妙な罠だった。

 ボクはとうとう、敵に捕まっちゃった。

 引っ掻いても蹴っても噛んでも、敵はボクを離さなかった。


 敵がボクの首根っこを掴むと、全く身動き出来なくなった。

 やめてよー、そう言おうとしたけど、声も上手く出せなくて。

 ボクはそのまま持ち上げられて、もうダメだって観念した。


 ボクは冷たい石の上に置かれ、押さえ付けられた。

 それから、敵はボクを水責めにしたんだ!

 これ嫌い、これやめて、やめてよー!


 こんな地獄の責め苦を受けるなら、まだ命を失った方がマシだ。

 そう思えるほどに、敵はボクを痛めつけた。

 それからまたボクを軽々と持ち上げると、今度は轟音でイジメたんだ。


 うるさい、不快、耳の奥がキンキンする!

 そんな攻撃を繰り返すと、敵は何故かボクを解放した。

 食べられちゃうかと思ったのに、ボクをイジメただけで満足したんだ。


 隠れ場所に戻ると、濡れた体を舐めて繕い、心を落ち着けた。

 変な匂いだ、この香りは敵の匂いと同じような気がする。

 もしかしたら、ボクを仲間にしようというのか?

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