第2話 捕食の時

 カゴの中で恐怖に震え、眠るなんて出来やしなかった。

 ママどこにいるの、お腹空いたよー、眠いよー、怖いよー、助けてよー。

 ボクが助けを求める度、敵が現れ、襲って来た。


 このカゴの中は、逃げ場所がなく、命の危険があった。

 最初はこの中にいた方が安全と思ったけど、そうじゃなかった。

 周囲が暗くなって、敵が寝静まった頃、ボクはカゴを脱出した。


 アタラシイイエダヨを忍び足で探索した。

 上下左右、どこからも襲われる心配のない場所を発見。

 冷たいカゴの中より、温かくて眠れそうだ。


 微かな物音に怯えながら、ボクはそこで夜を明かした。

 周囲が明るくなると、そこら中から足音や物音がし始めた。

 アタラシイイエダヨは、敵の棲み処だったんだ!


 昨日見掛けた二匹だけじゃなかった。

 一回りも二回りも大きな、親分みたいな敵も現れた。

 このままでは、ボクはすぐ見付かって、食べられちゃう!


 大きな敵は、ボクにあまり関心がないようだ。

 しかし昨日と同じ小さいのが二匹、ボクを探し回っていた。

 バタバタ歩き回っていたと思ったら、隠れ場所の前で足を止めた。


 敵は身を低くして、ボクのいる場所を覗き込んだんだ!

 そしてボクを見付けると、ニヤ~っと笑った!

 怖いよ、ママ、助けてっ!


 すぐ二匹目も現れて、またボクの方に手を伸ばした。

 ボクは逃げ場所を探したけど、後ろにも上にも逃げられなかった。

 パンチして、キックして、必死に抵抗して、大声で叫んで戦ったんだ。


 そうするうち、でっかい敵のボスが何かを命じたみたいだ。

 小さい二匹は、ようやくその場を離れた。

 キュウキュウと鳴るお腹の虫を抑えて、ボクは恐怖に震えた。


 敵はボクを捕食するのを諦め、どこかへ消えた。

 別の隠れ場所を探さなければ、今度こそ捕まっちゃう。

 そう思って、恐る恐る隠れ場所から顔を出した。


 じっと耳を澄ませ、様子を窺ったけど、敵の姿はなかった。

 その時、何か甘い匂いが、微かにボクの鼻腔をくすぐった。

 そういえば丸一日、何も食べていなかった。


 匂いのする方へ、忍び足で向かった。

 丸い器の中に、白くて甘い匂いのする水があった。

 嗅いだ覚えのある匂い、これはママの匂いだ!


 我慢出来ず、ペロペロと白い水を舐めた。

 とっても甘くて、美味しい!

 ママの味とはちょっと違うけど、ママの味にそっくりだった。


 お腹いっぱいになったら、何だか眠くなっちゃった。

 新しい隠れ場所を探すのは、また今度にしよう。

 また敵がやって来ても、上手く逃げられそうな気がした。


 その考えは甘かった。

 ボクはその日、敵に捕まってしまった。

 引っ掻いても蹴っても噛んでも、敵はボクを離さなかった。

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