【告白リミット】俺に残された時間はあと三分! 〈KAC参加作品〉

桃もちみいか(天音葵葉)

声だけで好きになった! 本店の高井さんに俺は恋してる!

 高井さんに片想いして二年半の俺には三分以内にやらなければならないことがあった。





 彼女の声、だけで。

 俺は恋に落ちた。

 好きになった!


 同じ会社の本店の高井さんに俺は恋してる。


 彼女とはほぼ毎日在庫確認業務で話してはいるが、俺は彼女の顔を知らないし彼女は俺の顔を知らないだろう。


 高井さんの声は澄んだ鈴の音のように耳障りの心地良い声。

 俺はいつも癒やされていた。


 ――電話越しで聴こえる貴女の可憐な声に恋をした。


 それから「ウフフ」と笑う上品な声にときめいて。




 ある日、高井さんが北海道本店から俺の働く沖縄支店にやって来ることになり俺はものすごっく舞い上がっていた。

 しかも案内係として俺が選ばれたんだ。

 ドキドキ、ドキドキして。

 そわそわしまくっていた。




 高井さんがやって来る朝。

 楽しみなのに緊張して仕方がなかった。

 会社の玄関で待っていると、現れたのは清楚で美しい女性だった。

 ――なんて美しい人なんだ!

 想像を上回る、それぐらい素敵な人だ。


 俺は高井さんに二度めの恋に落ちていた。



 飾り気のないただの応接室、高井さんが座っただけで華やいでいる。


「高井さん、初めまして。俺、藤堂海斗です。遠いとこお疲れ様です」

「初めまして。ウフフッ、なんだか初めましてな感じがしませんよね。お電話ではよくお話してますから。でもびっくりしました。藤堂さんって私がずっと描いていた想像通りの方でした」

「えっ、そうですか? 高井さんの想像の俺ってどんななのか気になります」

「気になりますか? えっとあの、一言で言ったら優しそうで誠実な雰囲気の男性ってとこでしょうか」


 楽しすぎて時間が過ぎるのが早すぎた。


 






 ドキドキ、時間はあと三分。

 別れの時間が迫る。

 高井さんが空港に行く迎えのタクシーが来る予定時刻まで、あと三分!

 それまでに告白したい。

 想いを伝えたい。

 玉砕覚悟で挑め、俺!

 

 だってきっとこれを逃したら二度と逢えないかもしれない。


「高井さん、あの……」


 俺は勇気を出した。

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