第3話 隔離部屋の少女
私がこの施設で暮らし始めてどのくらいの月日がたったのだろう?
すでに数ヶ月が経っているとは思うけど、もしかしたら数週間かもしれない。
それ程までに、ここでの暮らしは時間感覚が狂っていく様な気がする。
待遇自体は消して悪くないと思うが、とにかく外へ出してもらえない。
窓のない部屋に有るのは大きなベッドと机、それに本棚。
本棚には様々なジャンルの本があるがどれもページの端が日に焼けた様な感じになって古さを感じさせるものばかりだった。
何故こんな部屋に軟禁されているのか? それは私には分からない。
もっとも私には自分の前とこの部屋に来てからの記憶しかない。
私の名前は『
どこにでもいる普通の人間……だと思う。
そんな素性の怪しい私に、今日は外から人が訪ねてくるらしい。
この施設の関係者である松井さんの話が本当ならだ。
この松井さんは私の世話を担当している人で、大柄で面倒見のいい感じのおばさんって感じの人だ。
その松井さんが自分ごとのように私への来客が有ることを告げてきたのが(恐らく)昨日の事。
時間になったら呼びに来るとのことなので私はその時を待っていた。
その人に会うことが嬉しかったのかと言えばそういう訳でもない。
ただ、正体もしれない不安と期待が渦巻いていたの確かだった。
その人と会うことで何かが変わるかもしれない。
それは自分の正体が知れることであると同時に今の自分ではなくなるかもしれない。
そんな事を漠然と考えながらベッドで横になっているうちに眠っていた私は、松井さんの声で目が覚めたのだった。
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