第2話 それぞれ別の大陸へ

 アフリカで猛威を振るっていたのは、バッファローだけじゃない。

 ガゼルやキリン。シマウマやインパラすべてがモンスター化をする。


 肉食獣も同じ、すべての動物が凶暴化して人の住めるところは限定され、しかも食料の供給は確約できていない。

 そう、世界中が大変なのだ。


 過去、先進国に依頼すれば、制約はあれど援助がもらえた。

 だが今は、先進国どころか、近隣国すら行き来ができない。


 軍事主義を誇っていた国は、これ幸いと駆除をして、その肉を喰らい、人が人では無くなると情報を発信。その後情報は途絶えた。


 海岸に面した国は海路で、安息の地を求め国を脱出。


 モンスター化した動物たちも、砂漠を渡りヨーロッパへ進出していく。


 土着のモンスターたちと、アフリカ系モンスターの戦いが始まり、それに人間が巻き込まれていく。


 本来のゴブリンなどには銃が効いていた。

 だがアフリカ系モンスターには皮が分厚く丈夫なサイやカバ。

 進化したのか、先祖帰りか、二足歩行タイプまで居る。


 ワニの祖先はクロコダイロモルフと呼ばれる、二足歩行の動物だったと言われている。

 はたまた、古代エジプト人が崇めた、神セベクへと進化の途中なのかそれは分からない。


 ただ、凶悪で強い。


「ランチャーだ。ランチャーを持って来い」

 もう軍だかなんだか判らないが、トラックに乗った連中がモンスターに出会い戦闘を始める。


「だめだ、ここは通り道のようだ。俺達が迂回しよう」

「そうだな、小銃の徹甲弾がはじかれる。信じられん」


 あわてて、走り出したトラックに飛び乗る。


 いくつかのトラック。

 女子供も満載で、どこかの村ごと引っ越しているようだ。


 村や町があった痕跡。

 粉砕されて、それはアフリカ方面に近付くほど、ひどくなっていく。


「こっちは駄目だ。さっきの奴らが踏み潰したんだ」

 見つめる目に、絶望が色濃く出てくる。


「山を越えて、イタリアの方へ行って見よう」

 誰かがそう発案する。


「確かに向こう側へは、山越えのルートが必要だ。おい、燃料を探すぞ」

 目的が決まり、少し活気づく人々。


 バッファローたちは、特に定めも無く、先頭の奴が進む方向へ進んでいた。


 そんな中、他のモンスターをひき殺し、頭から体液をかぶる。

 その生暖かい体液は、口元にたどり着く。

 基本草食、何かの折に虫などを食べることがあるが偶然だ。

 だが、それは芳醇で美味かった。

 どこからとも湧いてきていた、渇きを薄めてくれた。


 頭を振りながら、伝ってくる体液を舐め取る。


 だが足りない。

 自分たちの集団を避けているモンスターがいる。

 彼は、集団から外れ、そいつに体当たりを喰らわす。

 見事に爆散とも言える衝撃を与え、肉を包み込んでいた袋だった皮膚から、漏れ出した体液。それを舐める。

 甘美。


 草食であるが奥歯はある。

 ごっそりと咥えて、ゴリゴリとすりつぶす。はじけて喉の奥へと何かが流れ込む。


 彼の体は、一気に大きく膨らむ。

 タンパク質を摂取し、そのまま血肉へと変えたように。


 角は分かれ、間に紫電がはじける。

 彼は雷の力を得たようだ。


 それからは、周りに出てくるモンスターたちは餌となる。


 周囲の仲間にも食わせ、バッファローだった者達は何かへと変化をする。


 ライオン達はとうに変化をして、二足歩行で道具を投げている。

 正常進化として、それが正しいのかは不明だが、強くはなった。


 人間達が銃で武装するように、彼らは石で武装し、凶悪な力でそれ投げる。


 逃げるときに、回収し忘れた銃を見つけ、その使い方を理解する。


 北へ北へと進むうち、まるで進化の行程をなぞるように進化をしていく。


 同じように人類は追われて、追い込まれるように北へと進む。


 一部は、怪しい雰囲気が満載のイングランドへ。

 方や、ユーラシア大陸へと歩みを進める。


 いつからか発生していた戦闘は止まり、今はそれどころでは無い。

 ツンドラからも見たことのない生き物が這い出してきた、彼らの吐く息には毒が含まれ、近くに寄ることができない。

 毒と言うには語弊がある。かつて存在していたバクテリアやウイルスたち。


 毒性が高く罹患りかんすると高熱出し数日で命を失う。

 ところが、亡くなった者達がまた起き上がり、人々を襲う。

 噛まれると感染してまた数日で亡くなる。


 ゾンビパニックが発生をしていた。


 ユーラシアの反対では、コロが仲間を増やしモンスターたちを退治していた。


 コロには意識があり、人間と敵対する気は無い。

 周りもそれを理解してくれたのか、この黒い集団には手出しをしない。


 人を救う、ヘルハウンドの集団として、有名になってく。


 そしてヨーロッパから流れてきた、もう一つの犬の集団。

 先頭が、ケルベロスであり、こちらは無差別に動くものを襲う。


 ある日、出会ってしまう。

 集団の総力戦。

 だがボスはボス同士、周りは手を出さない。


 ケルベロスも、口から火を噴きながら噛みつこうとする。


 だが複数の情報を取得。解析ができるが、胴体は一体。

 加速と減速。

 踊りとも思えるその動きに翻弄されて、クルクルと回るだけ、後ろから首を噛まれて頭ごと焼かれていく。

 そしてその炎は対象を焼き尽くすまで消えないらしく、全身を徐々に蝕まれていく。



 第3話へ続く。

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