三分以内にバッファローを全滅させないとゲームが落ちるギャルゲー

緋色 刹那

🦬🦬🦬🦬🦬

 俺・挑夢イドムには三分以内にやらなければならないことがあった。


「イドムくん、早くー」


 手を振るハルミ。笑顔がまぶしい。だが、今は彼女にかまっていられない。


「ブモォー」「ブモブモ」「ブッファモー」


「チッ、相変わらず邪魔だな」


 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ。ハルミはこの先にいる。


 にしても、何で街中にバッファローの群れが? ゲームでも許されないぞ。




 先週、オープンワールドの新作ギャルゲー「ラブファイト」を買った。


「待ってろ、ハルミ! 一番に攻略してやるぜ!」


 さっそくプレイした。が、待っていたのは地獄だった。


「転校生くん、私と手合わせしてくださる?」


「へ?」


 突如FPSが始まり、ヒロインの一人・ミリ嬢に倒された。ゲームも落ちた。


 ラブファイトはバグゲーだった。話しかけると高確率でFPSが始まり、負ければゲームが落ちる。


 なんとかハルミのデートイベントまで来たが、物理エンジンつきバッファローの群れが邪魔で進めない。しかもバッファローはムダに高解像度かつ増殖するため、三分過ぎるとゲームが落ちる。


 ……俺はバッファローもといハルミ攻略のため、当初の目標をあきらめた。




「頼んだぜ、ミリ嬢!」


「狩りの時間ね? 思いきり暴れてあげる!」


 俺の呼びかけに応じ、ミリ嬢が銃を乱射する。倒されたバッファローは「アイテム:肉」に変わった。


 肉には物理エンジンがない。簡単に通り抜けられる。俺はハルミを目指し、肉の川を突っ切った。


 常時臨戦態勢バグ持ちのミリ嬢なら、バッファローの群れにも勝てる……そう気づき、先にミリ嬢を攻略(討伐)した。攻略した女子はいつでもどこでも呼び出せる。ハルミ攻略のためだ、仕方ない。


「ハルミ!」


「イドムくん、おはよう。デート、楽しみだね」


 大輪の笑顔。あぁ……俺はこの笑顔のために頑張ってきたんだな。


「じゃ、行こっか!」


 ガチャッ


「……」


 ハルミの手には、デートに絶対いらないアサルトライフルがあった。


(了)

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三分以内にバッファローを全滅させないとゲームが落ちるギャルゲー 緋色 刹那 @kodiacbear

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