第4話 3.11

3/11ですね。何年経っても忘れられないあの日、あの時、皆さんは何をされていましたか?


私は築地に通っていたのですが地下鉄が無理すぎて仕事をサボってました。それが帰宅難民にならずに済んでしまったのは誰にも言えません。


自宅が揺れて、テレビを押さえながら外を見ると…地面が波打ってました。

当方は首都圏在住なので、東北地方は本当に…どんなだったか想像を絶します。



テレビの生中継で、黒く淀んだ海水が街を、人を飲み込んでいくのをただ、見ているしかなかった。

あれを撮影された方は、どんな気持ちだったのだろうか。


撮影した事を悪様にいう方もいました。

でも、何かを受け止めて悪い方に思うなら、それは自分の中身が悪いものだからだと思う。


あの動画があったからこそ次回の災害に活かせたと、私は思っています。

撮影した方だってそこから目を背けることはできない。助けたいと思ったって何も出来ない。

それを何とも思わない方が、必死で撮影するわけなんかないのに。



能登半島地震の時はテレビのアナウンサーが腹の底から叫び、訴えてくれて。それを見て助かって人もいれば、『大袈裟すぎる』『みっともない』などという陳腐な言葉を発する人もいる。

命が関わっているからこそ、自分の全てを賭けて自分ができる事をしている人にかける言葉がそんな物とは…可哀想な人たちだと偉そうにも思ってしまう。

誰よりも必死に叫んでいた女性アナウンサーの言葉は慟哭だった。

助けたいその一心が伝わる声でした。




災害があった場合、首都圏は避難先として受け入れる体制をすぐに取る。

私が住んでいる賃貸も、空いているお部屋に避難してきた方がいました。

あまり壁の厚くないアパートからは、しばらく何の音もしていなかった。


お仕事をなくして、お家で過ごしているはずなのに…隣にいながら私は何も助けてあげられない。

そんなふうに偉そうな考え方をしていた。


一週間後、テレビの音がするようになり、日々を重ねていくうちにドアから外に出る瞬間に出会してご挨拶したり…だんだんとその方は動き出していました。


ある日、山盛りにスーパーの袋を抱えて帰宅したその方は酔っ払ってベランダで鼻歌を歌っていた。

良いことがあったんだな、それを喜べるようになったんだなと私も勝手に嬉しくなったのを覚えています。



…自分できちんと、前を向いて生きている。何があっても、挫けずに一生懸命生きているのだとそう感じた。



ある日突然引っ越して行った隣の方は、被災した地に戻られたのだと大家さんにお聞きした。

何もかもを失って、心にも体にも傷を負った方はその、故郷に帰られたのだ、と衝撃を受けました。


私も故郷を離れて長く経ちましたが、心の中にはいつもその場所がある。

目を閉じるだけで帰れるそこは、他にかわりのない場所なんです。



最後に生きるなら地元に帰りたいなぁ、なんて考えている私にはその人が眩しく思えた。




東北の震災の後、本職で台湾に行く事になり。初めての台湾で楽しく過ごしていました。

台湾の方は、すんごく優しくてお節介です。

道に迷っても、電車の入り口がわからなくてウロウロしてても、コンビニでジュース買ってるだけでもニコニコ話しかけてくる。

可愛い人たちですよね。



紙幣すらよくわからないままお買い物をしてしまった私に、屋台の方が一つずつこれは何円、これは何円、屋台で出すならこっちの方がいい。あまり大きいお金は危ないよ、と優しく教えてくださった。


もちろん、アレな商法をしているお店もありますし、スリもいました。

でも、本当に優しい人たちなのだと実感したのは東北の地震がきっかけでした。



「あなたは東北地震で何か失ったか?怪我をしたか?大丈夫か?」

と、私が日本人だとわかると台湾の方は一人残らず尋ねてきた。

申し訳ない気持ちになりながら『何も被害はない。台湾の方がどの国よりも一人一人が多く寄付をしてくださったのを知っています。

本当にありがとうございました。』


と伝えると、綺麗な笑顔で微笑み、自分は日本が好きだから、何か役に立ちたい。また何かあれば、必ず寄付する。お前も頑張れよ!


なんて言われて。

私自身は些細な寄付しかしていないし、遠く離れた場所から祈る事をしてみたり、何にも出来ていないけれど…。私よりももっと離れた、台湾から思い遣ってくださる方がいるのだと思うと、胸が締め付けられて。

ただただありがとうとたくさん口にした旅でした。



台湾、大好き。また行きたいな…と思っている国です。




祈る、と言う行為は人間にしかできないのだそうですよ。

日本だけではなく、生きているだけで悲しい事や辛いことは訪れる。

地震だけでなく事故もあるし、犯罪に巻き込まれてしまう方もいる。


でも、人を思って祈る事は人にだけ許されている事だから。

誰かを思い、その人の安らぎを祈る事はせめてして行きたいなと思っています。


小説を書くのも、祈りのようなものかな、なんて思ったりして。


今日のつぶやきは、ここまでです。

ご覧下さいましてありがとうございます。



──

東北地震で亡くなった方が苦しみや悲しみから解き放たれますように。

遺された方が、前を向いて光のある方へ歩いていけますように。

みんなが笑いあえる未来になりますように。


黙祷。

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日々徒然 物書きの語り草 只深 @tadami

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