第3話 宴

午後七時から宴会場で夕食だ。

部長の乾杯の音頭で食事が始まる。そしてそのまま宴会へと突入するのだ。

僕はあまり酒は強くないのと幻の流星群が気になってビールは一杯だけにしてあとは烏龍茶。チャンスがあれば上山さんの隣に行こうと密かに狙っていた。

が、気がつくと彼女の姿が見えなくなっていた。



「三上しゃーん、飲んでますぅ?」


宴もたけなわになった頃、ビール瓶を持った橋本ちゃんがやって来た。顔を真っ赤にしてご機嫌な様子だ。


「おぉ、橋本ちゃんかー。だいぶ飲んでるのかな?」

「私はまだまだでしゅよぉ。でも楽しいれす。三上しゃんも飲みましょ」


ビール瓶を差し出す橋本ちゃん。

僕は酒はあまり強くないのだが、


「そうだね。橋本ちゃんのお酒を断ったらバチが当たるからな」


コップを手に取ると並々と注がれた。


「そんじゃーかんぱーい!」


僕らはグラスをカチンと当てると一気に飲み干した。

そういえば彼女は九州出身だったっけ。酒は相当強いらしい。さっきまで彼女とサシで飲んでいた今泉が部屋の隅っこで倒れていた。


「ところでさ、上山さんの姿が見えないんだけどどうかしたの?」


どさくさに紛れてさり気なく探りを入れてみた。


「ん?京子しゃん?何か疲れちゃったからってご飯だけ食べて部屋に戻りまひたよ」

「あ、そうなんだー。ふーん」

「あ!あぁ〜!!三上しゃんは京子しゃん狙いでしゅか?京子しゃんは優しいから三上しゃんとお似合いでしゅよぉ」

「ち、違うって!そんなんじゃないよ……。ただ、どうしたのかなぁって……」


と僕がしどろもどろに否定していると、橋本ちゃんはトイレから戻ってきた部長を見つけるなり、


「あ、部長〜!飲んでましゅかぁ〜?」


と僕のもとから離れていった。


しばらくして中締めとなり、飲み続ける者、部屋に戻る者、それぞれ自由解散となった。

僕は迷わずに部屋に戻った。上山さんがいないというのも大きかったが、どうしても幻の流星群が気になって仕方なかったのだ。


現在の時刻は午後十時半を回ったところ。最新の研究によると流星群の極大は午後十一時らしい。

僕はレジャーシートと毛布を持って部屋を出た。

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