第10話
「ぐぁ!」
関羽の苦痛の声と諸葛亮の喜びの声が同時に聞こえる。
「なかなかやりますな」
そんな楽進の言葉に劉備は答える。
「確かに呂布奉先の強さには感動を覚えたが、結局正体を現してしまったな」
(え?何がどうなってるんだ?)
そんな俺の疑問に答えたのは劉備ではなく楽進であった。
「いくら強くても戦い方には癖が出る。目を見れば分かりますよ。私がよく知る戦い方だったので」
俺は意味が分からなかったので質問しようとしたのだが、劉備は俺に向かって言う。
「悪いが今のうちだ!ここでお別れしよう」
劉備はそう言って俺の腕を引っ張ると門の方へと走り出す。
そんな状況を見守っていた魏続が関羽に尋ねる。
「お前は本当に呂布でなかったのか!」
(いや……俺は間違いなく呂布だぞ?)
困惑する俺に諸葛亮は言う。
「無駄口を叩かずに逃げるが宜しいか」
そんな諸葛亮の目にも関羽を捉えて離さない熱い想いを感じとっていた。
関羽は走り去る劉備の後姿を見つめ呟く。
「おい!呂布よ。貴様は本当にこれで良いのか?」
その声に対して劉備の代わりに俺が答える。
「お前に何が分かるんだよ!!」
俺の言葉が信じられなかったのか関羽は苦笑して言ったのだ。
「この関雲長、その志を知らずして中華は治まらぬ」
そんな関羽の戯言を無視して俺は劉備の後を追って門の方へと走り出した。
途中で諸葛亮とも合流し、何とか城門を抜けると目の前に関羽軍が待ち構えていた。
「覚悟は出来ていますかな?呂布奉先殿」
その言葉に答えず劉備は自らの手で印を結ぶと叫ぶ。
「玄徳軍!我に続け!!」
その言葉を合図に蜀軍は関羽軍に攻撃を始める。
その様子を振り返りながら俺は言った。
「良いのか?」
俺の問いに劉備は答える。
「ここまで関羽が仕掛けてきたのには何か裏があるはずだ」
その言葉通り関羽軍は攻撃してきた蜀軍に対して消極的な動きを見せたのである。
そんな中、諸葛亮が俺の隣にやって来て言ったのだ。
「確かに曹操様に連絡をする前ならそれも理解出来ますが、後宮に玉璽がなかったとしたらそれは有り得ますまい……私も曹操様にお願いし、関羽軍を追い払う事を進言してまいります」
そんな諸葛亮に俺はお礼を言って劉備の方を向いた。
「劉備、俺はお前を信じても良いのか?」
俺の問いに劉備は大きく頷くと言ったのだ。
「もちろんだとも。この危機を救えるのは天下を目指す俺達しかいない」
(こいつは何を勘違いしてるんだ?)
そう思いながら俺は大きくため息を吐くと言ったのである。
「(関羽は俺の身体見た事許さん……特にあそこ見た事許さん。抱いてもらうまで許さんからな)」
そんなことを考えていたのだ。
邪だな俺って……
すると諸葛亮が俺に声をかける。
「呂布殿、ありがとうございます」
そんな諸葛亮を見て俺は答えた。
「俺があんたの身体を見ても良いのか?」
冗談のつもりで言った俺に対して諸葛亮はあっさりと答えた。
「構いませんよ?その為に助けて頂いたのですから」
(本当に良いんですか~)
心の声は口にはしない。
だが、俺は心の中で呟いたのだ。
(なんだこの変なやり取りは……)
そんな事を考えている暇もなく、劉備は俺と諸葛亮を連れて城内から脱出する為、東門への移動を開始したのであった。
【広都近郊 張飛】
私こと張飛は呂布が劉備達を逃がす為の時間稼ぎをしている間に城門へ辿り着くと近くにいた関羽に向かって叫ぶ。
「我が名は張飛!蜀軍の武将としてではなく魏続殿の友人として貴公に頼みたい義がある!」
そんな私の言葉に意外にも相手は返答したのである。
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