第11話

「ほう?その頼みとは何だ?」

関羽の反応に少し驚いたのだが、私はそのままの勢いで言ってしまう。

「魏続殿を助けさせてはくれぬか?」

私の言葉を受けて関羽はしばらく考えた後に答える。

「助けてやっても良いが条件がある」

そんな関羽の言葉に私は頷いて答えた。

「貴殿に敵対した事、心からお詫び申し上げる……私に出来る事があるのならば何でも致す!」

私の言葉に関羽は笑って答えたのだ。

「そう警戒するな。少し試してみただけだ」

(試された?)

そんな事を思っていると関羽は私に尋ねてきたのである。

「ふむ。これから俺は天子を救出に向かわねばならないのだが、それについて来る事が出来るか?」

そんな関羽の質問に対して私は答える。

「何としてでもついて行く所存だ!」

私の返答を受けて関羽は頷くと、後ろに控えていた大将らしき人物に合図を送る。

するとその武将が城門を開け放ったのである。

(あの者が指揮をとるのか?)

そんな事を考えつつ関羽に付き従って歩き始めた。

「呂布殿」

「はい。何でしょう?諸葛亮殿」

「身体を見たいと先程言ってましたけど」

「あれは言葉のあやで……その」

「別にみたいな見せますけどお風呂とかで」

「え!?ほんとですか?」

【長坂】

趙雲は武人でありながら念には念を入れて玉璽を保管している宝物庫の前まで来ると見張り達を説得して道を開けさせた。

(これは私の勘なのだが……私はまだこの呂布という男を認めてはいないが何か違う気がする)

そんな思いからの行動であったが予想通りであったのだが、宝物庫の前で警戒に当たっていた者が一人だけいたのだ。

「やはりそう来ましたか」

その声に反応した趙雲の目の前には見知った顔が立っていたのである。

「また会ったな、張遼」

その張遼は何も答えずに武器を構えると趙雲に向かって突進してくる。

趙雲も武器を構えて迎撃したのだ。

二人の武器がぶつかり鈍い金属音が響く中、張遼は言う。

「ここで何をしている?」

槍と戟が激しく交差する中で二人は言葉を交わした。

「誤解です」

そんな趙雲の言葉に張遼は鼻で笑うと言ったのである。

「だろうな」

そんな張遼の言葉に趙雲はわざと尋ねたのだ。

「では何故?ここで戦おうと?」

すると張遼は少し驚いたような顔をすると答える。

「この宝物庫を守るのは私の使命だからだ」

(守る?)

趙雲がその言葉の意味に気が付くよりも早く、張遼は言葉を続ける。

「とは言え……実はそう答える様に言われているのだがな」

そう答えた瞬間、張遼が横へ飛び去ると背後に黒い影が立っていた。

「呂布奉先か!」

趙雲が驚きの声を上げるが、張遼はそれに対して答えたのである。

「この呂布奉先は私が少しだけ手を加えさせてもらった偽物だ」

その言葉に趙雲は後ろに飛び退き構え直す。

「この男に何をした?」

「少しだけ悪戯を」

笑みを浮かべた呂布を見た趙雲は思わず震える。

(これがあの呂布か?まるで別人ではないか!)

そんな事を考えてしまった趙雲に対して張遼は笑みを浮かべたまま答える。

「安心しろ。お前に危害を加えるような事はしない」

張遼はそう言って呂布に指示を与えるとその場を去ろうとすると、呂布が張遼に向かって言ったのである。

「まずは守るべきものを守りきるんだな」

呂布の言葉に一瞬不思議そうな顔をする張遼だったが何かに気が付き呟く。

「劉備様……関羽か」

(この男は何かを感じ取っているのか?)

そんな事を考えつつも張遼は槍を構えて趙雲に向き合うと言ったのである。

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