第9話

そう俺が驚いていると、諸葛亮が楽進に対して質問する。

「主を裏切るとはどういう意味かな?」

楽進は関羽を睨みつけると言ったのだ。

「この者は魏続殿から玉璽を盗むだけでなく、密かに蜀の地へ攻め入る準備をしていたのです」

それを聞いた関羽は笑みを浮かべて言う。

「それは誤解ですよ。私はただ曹操様に呂布軍の現状を知って頂く為にお目通りさせて頂く様にお願いしていただけ。何か邪推するような事を言いましたか?」

(そう仕向けたのはお前だろ!)

俺は関羽を睨んでいたのだが、劉備が楽進に向かって言ったのである。

「もしもこの話が本当ならどうするつもりなのだ!」

そんな劉備に対し楽進は叫ぶ。

「関羽の首と魏続殿の首を持ってお目通りさせて頂きます」

(こいつ本気だな)

俺がそう思っていると諸葛亮も答えたのだ。

「私も許します」

その言葉に俺は思ったのである。

(そんな簡単に楽進や諸葛亮を信用しても良いのだろうか?)

そう思って関羽を見ると、奴は俺にだけ見える様にニヤリと笑みを浮かべたのであった。

(やっぱり信じちゃ駄目だ!)

そう思った俺が何か言おうとした時、楽進がいきなり剣を抜くと関羽に襲い掛かったのである。

その予想外の出来事にさすがの曹操軍の武将達も驚き動揺していたのである。

そんな状況の中、楽進の剣が関羽を襲う。

「であ!」

叫び声と共に剣を振り下ろすが、関羽は身体を躱すと楽進の腕を取り投げ飛ばしたのだ。

(痛そうだ!)

そんな関羽を見て劉備は叫ぶ。

「待て!矛を収めるが良い」

楽進は慌てて立ち上がると剣を収めると俺を見る。

(分かったよ!俺は止めないよ)

俺が頷くと諸葛亮も立ち上がり言った。

「確かに我らが口を挟む話ではありませんでしたな。関羽殿の言葉、私も信じよう」

その態度から劉備の怒りは収まるどころか逆に増していくようであった。

「関羽!どうあっても魏続を殺したいというのか?」

関羽は冷静に答える。

「確かに私は魏続殿を傷つけました。それは反省しておりますので償いをさせて頂きたいです」

劉備はそう言うと魏続に向かって言ったのだ。

「魏続よ。楽進が本当にお前を殺したいと言うのならお前の好きにするが良い。だが、張飛は違うぞ?あれは関羽が先に魏続に手を出したと言ったのだ」

「劉備様!」

これには関羽も驚いた様で劉備に訴えるように言ったのだが劉備は首を横に振って答える。

「反意を抱く者を生かしてはおけない」

(そうだ!もっと言ってやれ!!)

俺は心の中で叫んでいると関羽が俺の首に腕を回して言ったのである。

「では、そのようにお伝えしようと思います」

俺はそんな関羽の腕を振りほどくと奴の頬を拳で殴った。

(ちっ!避けられたか)

「どういうつもりかな?呂布奉先殿」

怒りを押し殺しながら言う関羽に俺も怒りを爆発させるように答えた。

「どうあっても魏続を殺す気か?」

俺の怒声に対して関羽は鼻で笑って答える。

「悪いが呂布殿はここで死んでもらう!」

関羽は剣を構えると今度は俺に斬りかかって来たのだ。

その動きは俺の予想を超えており、とても躱せるものではなかった。

(しまった!斬られる!)

そう思った瞬間である。

甲高い金属音と共に関羽の剣を劉備が槍で受け止めたのだ。

「なに!?」

関羽が驚いている隙に、劉備は鋭い突きを繰り出して魏続の前に立つ諸葛亮に迫る。

それと同時に関羽の身体にも楽進が長棍の一撃で攻撃を加えてきたのだ。

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