第6話
「それをいうなら我らも同じじゃ、だが我らは呂布などという化け物と戦っていたわけではない。軍師殿は自らの能力の無さを他のものに転嫁し、我らを侮り始めたという事じゃな」
そう嘲笑しながら夏侯惇が言うと曹操軍の武将達も頷(うなず)く者もいた。
そんな時である、劉備は顔を上げて言ったのである。
「今の話は否定出来ない事実だ」
しかしその後の言葉は全く逆であったのだが。
「そんな私を救ってくれた人がいるのだ」
そう言って劉備は呂布奉先の方を見る。
周囲の視線が呂布の方に集中した。
そんな中、関羽だけは不思議そうにしていた。
「ま、まさか!?」
そんな関羽の事などお構いなしに劉備は真っ直ぐに視線を向けると再び口を開く。
「私を救い、ここまで連れてきてくれたのはこの御方だ」
(は?何を言っているんだ?)
とその場にいた全員が思った瞬間、扉が開き数名の武将が入ってきたのだ。
最初に入って来たのは張飛であった。
そしてそれに続いて関羽、黄忠、厳顔の順に入ってくる。
更に劉備の両脇には諸葛亮と鳳統がいたのである。
「なぜ関羽殿が呂布奉先の両脇に!?」
その事実を知った曹操軍の諸将からは悲鳴に近い声が上がる。
そしてその後に続くように入って来た者たちは皆、驚愕の表情をしていた。
そんな中でも呂布は表情を変えずにいたが内心では驚いていた。
(魏続!?夏侯惇に魏越、夏侯淵までいるじゃないか!?)
関羽の他に名だたる武将が呂布の横に並んでいるのだ。
驚かないはずがなかった。
(これって俺に対する牽制か?)
そう考えると辻褄(つじつま)が合う話なのだ。
劉備軍を滅ぼそうとすれば俺が止めると言いたいのだ。
つまり曹操軍が天下を取る為には関羽の首では足りないと言っている様な物であった。
そんな緊張感が漂う中、諸葛亮が劉備の横に立った。
「諸葛亮殿、お主が何故ここにいるのじゃ?」
曹操軍の武将である曹性という武将が騒ぎ始めたので劉備は口を開く。
「お主らが不思議に思うのも仕方のない事じゃ」
そう言ってから関羽の事を紹介しようとした瞬間、横から陳登と法正が入ってきたのだ。
(確かに彼らの話はしてたけど早すぎないか?)
突然の出来事に俺は目が点になっていたと思う。
そんな俺に対して関羽が話しかけてきたのだ。
「久しいな、奉先殿」
そう俺に声を掛けると軽く笑う。
俺が何も答えずにいると周囲が更にざわめき始めた。
(なんでお前らこんなに早く揃うんだよ!)
そう思った俺は慌てて口を開く。
「これは何の騒ぎですか?私は魏続殿と話をしていただけですが?」
それを聞いた曹操軍の武将たちは顔色を変える。
「そんな馬鹿な!?」
そんな中、いち早く平静を取り戻した曹性が言った。
「魏続は関羽殿や呂布奉先と共に行動していたではありませんか?」
そんな曹性の声を聞いた劉備は驚きつつも首を横に振った。
「それは違うぞ、関羽殿は奉先殿に味方した事で共にいるのだ」
(何言っているんだよ?)
そう思ったのだが、それと同時に鳳統が口を開いたのだ。
「私も見ていましたよ。魏続様は呂布様に力を与えたのです」
(くそ!またバラした)
「そんな馬鹿な事があるか!いくら呂布でも一つの国を相手にして勝てるわけがない!」
そう言って騒いでいる曹性の目の前に黒い物体が転がって来た。
(あれは!?)
それを見た夏侯淵が驚いた顔をしていた。
関羽がそれを拾うと俺に手渡す。俺は関羽からその武器を受け取るとわざとらしく言った。
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