第7話

「おお、これは曹性殿の短弓ではないか、ご心配めさるな」

俺の言葉を聞いた曹操軍の武将達は顔色を変える。

それは、俺が曹性を殺した事を認めたように感じたからだ。

(くそ!陳登と法正のせいか?)

ここで下手に隠そうとすれば逆に怪しくなると思い俺は認める事にしたのだ。

関羽も俺と同じ考えなのか特に反論するわけでもなく黙っていた。

そんな空気の中、諸葛亮が一歩前に出てくると言ったのである。

「お主達が魏続殿を殺したのか?」

「だったらどうした!」

怒りで我を忘れた曹性が再び大声を上げた。

(何なんだよ、本当に)

俺が大きく溜息をつくと関羽が口を開いた。

「それは間違いない事実です。俺は奉先殿に加勢する為に曹性殿の元にいましたが、確かに奉先殿の軍に加わりたいと思い魏続殿のお命を奪いました」

(おいおい!マジか?)

関羽の口から出た言葉に諸葛亮は険しい顔をする。

「その言い分、何故先に言わん!?」

「呂布殿が魏続殿の味方をしている様に感じられましたので、なるべく穏便に事を進めたかったからですよ」

(なるほどな)

さすがの劉備も言葉を失いかけていた。

(こりゃやべー状況になってきたな)

そう思ったのだが、予想に反して諸葛亮が吼え始めたのだ。

「ふざけるな!そんな言い分が認められる訳ないだろう!!」

(そりゃそうだろうな)

俺は思ったがそれでも関羽は淡々とした口調で諸葛亮に言う。

「それならば俺を殺しますか?それとも奉先殿を捕まえますか?」

そんな関羽の言葉に周囲がさらに騒ぎ始めたのだ。

(まあ、そうなるな)

俺がそう思った時だった。

夏侯淵が武器を持つと関羽に突きつける。

それに反応した陳登や厳顔が同じように武器を向ける中、黄蓋だけが俺を見ていた。

(ん?何をしてるんだ?黄蓋の爺さんは?)

俺が不思議に思っていると、魏続が飛び込んで来て叫んだのだ。

「お止め下さい!この事は全て私の責任です。二人共悪くありません!!」

その声で大騒ぎをしていた周りが一斉に静まりかえったのだ。

(ん?今度は何なんだ?)

そんな状態の中、諸葛亮が再び関羽に尋ねる。

「お主は呂布に何をさせるつもりだったんだ?」

そんな諸葛亮の質問に関羽は少し考える。

「私の子を産ませる予定でした」

(何言ってるのこの人?)

俺が驚いていると魏続が床に平伏すと言ったのである。

「私の為を思って関羽殿はそうしようと言ってくれたのです」

(ちょっと待ってくれ、何故それをこの場で言うんだよ?)

そんな俺を無視して関羽はさらに口を開く。

「奉先殿の子ならば必ずや良き武将に育つと思います」

(もう止めてよ、これ以上は聞きたくない)

そんな願いが叶ったのか俺は叫ぶ。

「ふざけるな!俺は男だから子は産めない」

「下に女性器もあるくせに?」

(バレてるどうして!?)

俺は衝撃を受けていた。

(俺、下の事なんて言ってないぞ?)

「どうして分かった?」

俺の疑問に関羽は真面目な顔で言う。

「奉先殿が眠っている時に少し触らせてもらった」

(殺す!こいつ殺す!!)

そんなやり取りを見ていた曹操軍の諸将は可哀想な目で俺を見ると小声で会話を始めたのだ。

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