第4話
その時に張曼成を撃退したのは関羽と張飛であり、関羽はその時に折れた剣を使った事を話した。
曹操が感心していると横から諸葛亮が言いづらそうに口を開く。
「その剣は以前、私が関羽殿から借りた物なのです」
その話に曹操が興味を持ったようで何か質問を始めた。
そこで呂布奉先が助け舟を出す様に口を挟む。
「実は黄巾党との戦いの最中で陳宮という者から関羽が剣を借りているのを目撃しました。
しかし、曹操殿ならそれと同じ剣を作れるはずです」
その言葉に曹操は大笑いをする。
「なるほど、それでは関羽と言う武将に会ってその剣を見せて貰おうか」
そう言ってその場は終わったそうだ。
それを聞いた俺は呟く。
「嘘っぽいですね」
俺の言葉に諸葛亮は驚いた様子を見せた。
そして少し考えると笑顔で頷く。
「確かにそうですね……とにかく曹操殿と同盟を組む事が出来たのですから。呂布殿に剣を一つお願いできますか?」
俺は諸葛亮の言葉に頷くと、持っている剣の中から選ぼうとすると諸葛亮は残念そうに言う。
「もし宜しければ呂布殿の持っていた剣を見せて下さいませんか」
そう言われて俺は関羽の剣を一つ出すと諸葛亮に渡した。
すると諸葛亮はその剣を手に取って息を飲んだ。
「凄い……これを関羽殿は?」
俺は頷いて答える。
「彼は武人ですから、使える物は使うのです。他の人にはこんな使い方は出来ませんよ」
その言葉に諸葛亮は何度も頷いてその剣を眺めて暫く動かなかった。
(俺も張飛や関羽だったらこの剣を使ったかな)
少し疑問に思いながら俺は劉備の所へ向かった。
劉備は曹操と同盟を結ぶ事が出来た事に対してとても嬉しそうにしていた。
俺に対して感謝の言葉を何度も言っていた。
「さすが呂布殿です」
俺は微笑んで頷く。
劉備は俺の手を取るとさらに感謝の言葉を口にし続けた。
しかし、俺は複雑な気持ちでもあった。
黄巾党討伐が終われば再び曹操と戦う事になるのだろうと。
そのためにも劉備にはもっと強くなって貰わないといけないとも思っていた。
後日、関羽の剣が完成したと連絡を受け、俺たちは許昌を離れ南進する事になった。
それは孔明との別れを意味していた。
孔明も俺たちと共に南へ来る事を望んでいた。
だがそれは諸葛亮と共に曹操への出仕が決まっていた以上、叶わなかった。
孔明もそれを分かっていたのかただ微笑み言う。
「また御会いしましょう、いずれかは私が天下の名軍師になるでしょう」
俺はその言葉を笑いながら聞いた。それが孔明の本音なのかどうなのかは分からないが劉備軍と敵対だけはしてはいけないと思った。それは曹操と敵対する事に繋がるからだ。そうなれば呂布奉先とて無事で済むわけがない。
(出来れば、このまま孔明とは敵対したくないな)
関羽も複雑そうな表情を浮かべていた。
恐らく、同じ事を思っているに違いない。
劉備軍は荊州へ向かって進軍を続けるのだった。
次の目的地である襄陽までは関所が幾つもあり時間もかかるだろうと誰もが思っていたが、事前に分かっている通行許可証があったのでほぼ素通りだった。
洛陽を出る際に陳宮が手をまわして通行許可証を発行してくれたのだ。
(黄巾党との戦いの時も通行許可証をくれたよな)
俺が感謝の意を伝えると、陳宮は少し照れながら答える。
「この程度は当然の事です。兄上の為ならなんでもします」
そんな可愛い事を言うので俺は頭を撫でてやりたい気分になった。
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