悪魔にさえ選択の自由を許す神

 ③アモルト神父「聖ミカエルはなぜ悪魔を殺さなかったんだ」(0:08:30)


 聖ミカエルとは三大天使の一人だ。

 右手に燃える剣、左手に秤を持つ。神の代理執行者であり、武器と秤を扱う者の守護者である。

 このシーンで見ている絵画に映る悪魔はサタンであり、このとき聖ミカエルはサタンをののしりさばくことはあえてせず、ただ「主がおまえを戒めて下さるように」と言ったとされる。

 サタンや堕天使たちにも自由意志が与えられており、彼らは神に反逆する選択をしたというのがカトリック教会の解釈であり、この自由意志の尊重は、神の愛と正義の表現とされる。

 神はすべての創造物に自由意志を与えたので、すべての創造物は善か悪かを選択する自由を持っている。

 このため、聖ミカエルがサタンを完全に「仕留める」ことは、神の正義と自由意志の概念に反する行為になると考える。

 それが、アモルト神父の次の台詞である。


 「人の持つ選択の自由が唯一、神の愛を阻む。だが神は神であるがゆえに地獄に落ちたものにさえも選択を認める。聖ミカエルはそれを知っていた」


 つまり、人にも選択の自由が認められている。堕ちることも神は許している。が、その責任は自分で取らなければならない。

 愛に気付かないものは、いかに自分が愛されているかわからないのだ。

 そしてこの選択の自由こそがこの物語の根幹なのだろうと私は思う。


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