マリウスside:やり直すべきは……
胸へ落ちる邪魔な髪を後ろに払い、首筋に思い切り吸い付く。クリスタの肩がびくりと跳ねた。「うっ」と息の詰まった唸り声を上げながらも、身を固くして我慢しているのが健気で、もっと意地悪したくなる。
首筋に舌を這わせ、耳朶を噛みながら、胸元のボタンを外していく。
「待ってください。だめ……」
止めてと言われても聞くつもりはない。
胸の下までボタンを外し、下着をずらして左右の胸の間に二つ、胸の頬に一つ、次々に赤い印をつけていく。
「んうっ……!」
もう許してやろうかと口を離すと、クリスタが身動ぎした。そのせいで、隠れていた胸の頂がちらりと見えて、綺麗な色だ、と思った瞬間には、もう食らいついていた。
見てしまうと駄目なものだな、と、頭の中では案外冷静に考えていて。それでも全然止めるという選択肢は無くて。クリスタの口から漏れるのが、「ん」じゃなくて「あ」になったから、余計に調子に乗った。
「まっ…… や…… あ、あ、だめ…… 吸わないで…… あんっ」
こんな甘い声を出して、本当に止めさせる気があるんだろうか。
クリスタを机の上に押し倒し、伸し掛かって存分に吸い、もう一方も舌先と歯で味わい尽くす。
「入れて良い?」
「駄目ぇ!」
これは本気の駄目だと伝わった。ちっ。
「はぁ…… 入れたい」
「ここでは、やっぱり……」
ここじゃないなら良いのか?
「行こう」
「どこへですか!?」
「花の離宮。前に行ったろ?」
「駄目です! あそこは王妃様の大切な……」
「昨年、俺が譲り受けた。クリスタなら連れ込んで良いそうだ」
「王妃様がそうおっしゃったんですか?!」
「ああ。もう既に連れ込んだのも知ってる」
俺の言葉に、クリスタが金魚みたいに赤くなって、口をパクパクさせる。可愛い。
なのに、この期に及んでまだ「でも……」と難癖つけようとするクリスタの衣服を直してやる。
「クリスタはさっき、始まる前に間違えたと言ったが、違うぞ。間違えたのは、あの日の朝だ。あの朝、クリスタが何も聞かずに逃げたのが悪い。俺は全部うまくいくよう、段取りまで考えていたのに。クリスタは何も聞かずに、なかったことにしようとした」
思い出すと悔しくて、また噛みつくようなキスをする。
「やり直すなら、あの朝からだ。今からするぞ」
「え? する? 朝を?」
「朝をやり直すには、あの夜からやり直すんだよ」
分からないふりなのか、本当に分からないのか、「え? 夜? え? え?」と戸惑うように呟くクリスタを机から下ろして、手を引く。
「いいから行くぞ」
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