第12話:最後の光、運命の影(3/3)

「ルナ、心配するな。翔子を守る。それが俺の選んだ道だ」レンの言葉には、もはや迷いはない。彼は自らの決断と、それに伴うリスクを全て受け入れていた。


 月読の強制操作により、レンがこれから展開しようとするスキルは、今までのすべてを凌駕することを予感させた。正面に真っ直ぐ伸ばした腕の彼自身の手のひらから始まり、紅黒の稲妻のような文様が腕に浮き上がり、生き生きと躍動する。このスキルの発動は、彼の命運を握る深刻でかつ破滅的な力の象徴である。紅い粒子が腕を中心に旋回し始める様子は、この力がレン自身の制御を超えた存在になりつつあることを示唆している。


 息をのむような静寂の後、その力は集中と共に両手のひらに向かって集約され、レンはこのスキルが未来の重大な局面での最後の切り札となることを悟る。月読の声が彼の意識に届く、「覚えておくが良い――。『月光』」。この一言には、レンがこれから放つ力の壮絶さと、それに伴う破滅の予兆が込められている。


 そして、紅い閃光が一瞬で巨大化し、その場にいる全てを超える力を示す。この瞬間放たれた光は、音速を超える勢いで直進し、その道中にあるもの全てを貫通、遠く離れた地点で衝撃を与える。この光は空を赤く染め上げ、まるでキノコ雲のように天高く昇る姿は、このスキルが持つ破壊力の凄まじさを物語っている。


 その瞬間、背後から翔子が心配そうに駆け寄る声、「蓮司!」という叫びが、緊迫した空気を一層引き締める。レンは即座に反応し、「翔子!」と叫び、二人の絆の強さを改めて示す。月読命の囁き、「慈悲を与えようぞ」が、この絶望的な状況における一筋の光を示唆する。


 二人は迫り来る爆風の中、互いを強く抱きしめ合う。この行為は、彼らが直面する困難に立ち向かう覚悟と、お互いへの深い愛情を表している。月読命の憑依がもたらす高い防御力は、レンが翔子を守るための盾となり、彼らを最悪の結末から救う。


 しかし、月読命の力は副作用を伴う。レンは、その力の影響で「神を殺せ」という声が心の奥底から響いてくることに気づく。この狂気じみた囁きは、レンが今後直面する「地獄の日々」の始まりを予告している。

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