第12話:最後の光、運命の影(2/3)
月読命は不敵な笑みを浮かべ、「ふふふ面白い男だ。その眼に免じて多少は配慮して進ぜよう」と言い、レンの呼びかけに応える。
「誓……約だ……。名……前を……呼ぶ……ぞ」「かまわぬ」
「桧……蓮司……は、月読命……を召……喚し……誓……約……する! いざ……参る!」
「わらわは、月読命。誓約に遵じて全てを貸そうぞ」
レンと月読の声が同時に空間に響き渡り、静まり返りしばらくした後「誓約!」という言葉が静寂を破る。レンの体は黄金の粒子に包まれ、彼の負った傷は驚くほどの速さで癒されていく。
ルナは「レン、今のは……古の『贄の誓約』だよ……」と告げるが、レンはすでにその重さを理解していた。「ああ、わかっている。これしか道がなかったんだよ」
ルナの心配する顔を見て、レンは自信満々に言う。「ルナの体はもちろん探し出す。翔子の安全も確保する。そのあとはこいつに任せてやる」
レンは月読命の憑依を受け、その存在が彼の内側に溶け込む感覚に包まれた。月読命は、彼の心に直接話しかけるように囁く。
「あなたの全てを受け入れるわ。あなたが恐れていた生き残ること、その苦しみも、私はあなたと共にいる。あなたの大切なものは私にとっても大切。あなたにとっての敵は私にとっても敵。あなたの命も、他人の命も、すべては私のもの。あなたの悩み、あなたの憂いも、私と共にある。さあ、私たちの誓約の証として、この世界を変えましょう。あなたのため、そして黄泉の国の月のために」
レンはその言葉の重さを胸に感じつつ、必要な力を得るための覚悟を決める。「今のは一体……。俺はここで――」彼は、月読から与えられた新たな力に目覚める。それは影を利用して広範囲の敵を攻撃する「月夜の侵食」というスキルだった。
ゆっくりと起き上がると、扉を開けて外に出る。
先の落雷と光の粒子の奔流で村人たちは小屋から距離をとって様子を見ていた。
深呼吸を一つして、レンは全身から集中力を高め、影が生み出される月の光を背にして立つ。彼は力を込めて叫ぶ、「月夜の――侵食!」その呼びかけと共に、影たちは不穏な動きを始めた。周囲の者たちが作り出す影が突如として暗黒の腕へと変貌し、その腕は周囲の村人たちを一人また一人と影の中へと引きずり込んでいく。このスキルにより、レンの視界に入った全てが消え去る。
しかし、その代償は大きい。スキルを使用するごとに、体の一部が制御不能に陥り、最終的にはその部位を憑依した者が一日自由に操ることができる。「月夜の侵食」の力を二回使用したレンは、このリスクを受け入れていた。ルナからの心配をよそに、「ああ、わかっている。これしか道がなかったんだよ」とレンは断言する。彼はルナを安心させ、翔子を守る決意を新たにする。
ルナの心配する声が、レンの決断の重大さを浮き彫りにする。「レン! これで二回目だよ、大丈夫?」その問い掛けに、レンは自らの選択とその結果――身体の一部が一時的に制御できなくなる現実を、静かに受け入れる。
「ああ、二回連続で使ったな。でも、俺には翔子を守るためには選択肢がないんだ」レンの声は覚悟を込めていたが、同時に自身が操り人形になり得る危険を完全に理解していることを示していた。
月読命の召喚と憑依により、レンは特別な力「月夜の侵食」を使用し、そのスキルにより村人たちを一掃した。しかし、その力を手に入れたことで、彼の体はさらなる代償を支払うことになる。
「ふふふ、ようやくね。双腕を少し拝借してみようか」月読命の冷ややかな笑い声が、レンの意識を迂回し、彼の腕を制御下に置く。この時、レンは自分の体が自分の意志に反して動く恐怖を感じるが、翔子への愛と守りたいという思いが、彼を前進させ続ける力となる。
ルナの心配をよそに、レンは翔子との約束、彼女を守るという自分の使命を果たすために、どんな代償も払うことを決意していた。
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