　レンは祠で見つけた小太刀を手に取り、その切れ味の良さと特別な存在感に心惹かれる。

「この刀、名前はクロウでいいかな？」レンが提案すると、狼は明らかに喜んでいる様子を見せた。

　レンはルナと狼、後にクロウと名付けられた存在との間で交わされる会話に、時間の経過を忘れて没頭していた。翔子が不思議そうに近づいてきた時、レンは手元の小太刀を彼女に見せた。

「これ、何か特別な刀みたいなんだ」とレンが言うと、翔子は戸惑いを隠せずにいた。「え？　私には普通の刀にしか見えないわ」と彼女が答えた時、レンは混乱を隠せなかった。

　ルナからの説明で、レンはこの小太刀が特別な存在であることを理解し始める。「それは認められた者にしか特殊なところが見えないものよ。クロウも含めてね」とルナが言う。

　レンは小太刀とクロウ、そして彼らの奇妙な関係についてさらに詳しく知ることになった。ルナはかつて呪物としての過去を持つこの小太刀について語り、それがレンに深い関心を抱いていることを明かした。「それは、雌なのよ。そして雄を求めている」とルナが続けた。

　この小太刀はレンの勇気や誠実さに惹かれ、小太刀の感覚では彼の血は甘く心を奪われた。レンの保護の下で存在を選び、彼だけに実体化することを即、決めたのだ。

「刀が雌？」レンが驚きを隠せない。ルナはさらに、この小太刀が最終的に人の形を取り、子を成す可能性があることを示唆した。「それはどういうことなんだ？」レンが疑問を投げかけると、ルナは「その刀はレン以外には扱えない。戦力にはなるけど小太刀側の依存性が強く、ずっとついて回るわよ」と忠告した。

　レンとルナの会話は、外部から見れば一瞬の出来事に過ぎなかった。翔子にはその詳細が伝わらないまま、二人（と一匹）の新たな旅が始まろうとしていた。

　レンは、翔子の懸念を受けて深呼吸を1つし、彼女に向けて微笑んだ。「ごめん、心配をかけちゃって。ルナが教えてくれたんだけど、この刀、実は呪物らしいんだ。でも、武器としてはちゃんと使えるみたいだから、持っておくつもりなんだ」

　翔子は優しく微笑み返した。「レン君の周りには、本当に色んな存在が集まるわね。異世界って、予想もしないことがいっぱいあるのね」

「うん、まさか人じゃないものまで親しくなるなんてね。でも、翔子さんがいてくれるから、何とかなる気がする」

　夕暮れの柔らかい光が二人を包み込む中、翔子はレンの言葉に心からの安堵を感じた。「いつでも話を聞くわ。心配しないで」

　帰り際二人は、夕日が地平線を赤く染める美しい光景に見とれながら、寄り添って時を過ごした。「こんなに美しい景色、一緒にいられて幸せだな」とレンがつぶやくと、翔子は「私も同じよ。もっと一緒に美しい場所を見に行きたいわ」と返した。

　レンは翔子への約束を新たにする。「妖精や呪物のことで、翔子さんを悩ませないようにするよ。一緒にいる時間を、もっと大事にしたい」

　翔子はレンの鼻を優しく指でつつきながら、彼に向かって微笑んだ。「大丈夫、私たちには、おまじないがあるから」

「おまじない？」レンが不思議そうに尋ねると、翔子は静かに彼に近づき、そっと彼の唇に自分の唇を重ねた。その瞬間、レンは全身に甘い痺れを感じ、時間を止めたいと切に願った。彼女の腰に手を回し、ゆっくりと抱きしめる。その瞬間は、永遠にも感じられるほど甘美で、彼らにとって忘れがたい記憶となった。

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