第7話:召喚されし者との誓約(3/4)

 レンは、翔子と共に祠を訪れた際、唯一見覚えのある刀を発見した。その刀は、短刀と太刀の中間サイズの小太刀であり、その存在は彼らにとって謎に包まれたままだった。刀を取り出してみると、そのシンプルながらも繊細な造りに目を奪われた。


 翔子は、レンが鞘から引き抜いた刀について、その繊細な文様と輝きに目を奪われつつも、何か特別な力を感じ取っていた。


 レンが祠の中で目にした刀は、かつて肉眼で見たことのある有名な刀に非常に似ていた。


「これは『長光』なのか?」レンは心の中で疑問を抱いた。


 この刀は小太刀に分類されるかもしれないが、その由来や、なぜこの祠に保管されているのかについては、レンには全く理解できなかった。切先から柄に目を移していくと、「九楼」という文字が刻まれているのを見つけた。


「――クロウと読むのかな?」レンが声に出して呟いたとき、ルナが突然動揺し始めた。


「大問題よ! それは、呪刀『九楼』よ!」ルナの声には明らかな興奮と懸念が混ざっていた。


 ルナは、刀の存在について深く悩んでいた。彼女はこの小太刀「九楼」がもたらす可能性のある危険性を理解しているが、どう対応すべきかについては明確な答えを持っていなかった。


 レンは、刀に再び目を向けた。美しい銀色の刀身は、新品のように輝いており、繊細な波の文様が刻まれていた。しかし、不注意により切先にわずかに触れた瞬間、彼の指から出た血が不思議な現象を起こし、刀身を赤く染め上げた。その異常な現象は、まるで刀が生きているかのような印象を彼に与えた。また胸の苦痛により一瞬顔を歪めた。


「レン、大丈夫?」ルナが心配そうに尋ねると、レンは「心臓を掴まれたような衝撃だった」と返答した。


 ルナは、呪刀『九楼』の存在とその可能性について深く悩み始めた。その重大さについて考え込むうちに、ルナはあることに気づいた。


「あっ、足元を見て!」ルナが叫んだ瞬間、レンの足元には中型犬程度の小さな狼が現れた。この狼は、猫のように人懐っこく、半透明の幽体でレンに擦り寄ってきた。


 不意にレンの足元に現れた灰色の体毛を持つ狼は、刀と何らかの関連があるかのようで、レンに懐いている様子を見せた。ルナによれば、この狼は幽体の状態にあるとのことで、以前にも同様の現象を目撃していたらしい。


「これは、あの小太刀に関係があるのかな?」レンが呟くと、狼は元気よく吠え返した。


「それにしても、なんて人懐っこい狼なんだ。ルナと同じ幽体なの?」レンが尋ねると、ルナは苦笑いした。


「比較しないで。でもね、これがもし人の形だったら、レンはもっと困ることになっていたわ。よほどレンのことが気に入ったみたいね」

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