第7話:召喚されし者との誓約(1/4)
数日が経過し、村人たちは賢者から受け取った憑依召喚の魔導書を駆使し、冒険へと出かける者が大半となった。その使用法は賢者が示した通り、驚くほど容易だった。魔導書を素肌に触れさせるだけで、まるで水が蒸発するかのように体内へと自然に溶け込んでいくのだ。
魔導書の文字は魔力によって書かれており、使用者の皮膚に触れることで魔力が体内に留まり、使用者の意志で魔法が発動するようになる。しかし、使用者は忘れてはならない、そして避けられない苛烈な誓約に縛られる。その誓約とは、スキルを一度使用するごとに体の一部が憑依された存在によって乗っ取られること。これは召喚された者が使用者の体を自由に操ることを意味し、使用者はその選択を拒否することができない。
つまりスキルを使用する度に、誓約が発動し、体の部位が次々と乗っ取られていく。初めは腕から始まり、次に脚、そして胴体と順に制御を失い、六回目の使用で最終的に頭までが乗っ取られ、全身が完全に支配される。一日経過すると、この乗っ取りは一時的に解除されるが、何度も繰り返すことで、この解除が徐々に不完全になっていく。そして、七回目の使用で、最終的には心までが乗っ取られ、文字どおりの完全な支配が実現される。
魔導書を発動後、使用者が召喚を望めば、魔導書はその意志に応じて召喚を開始する。そして召喚された存在との意志疎通を通じて、その力を借り受けることができる。召喚された存在は、自らの力を誇示するか、召喚した者を依存させるために積極的にスキルを使用させる傾向がある。
強い意志を持っていても、召喚者は容易に召喚された存在に惑わされてしまう。重要なのは、いかにしてその誘惑に負けず、スキルの使用を慎重に制限するかである。
村人たちは、この世界での魔法の使い手として地位を向上させるため、リスクを承知で魔導書を使用した。魔力至上主義の世界では、魔力と魔法が生存と名誉の基盤となるため、魔法が使えないことは大きな不利益となる。そして、自らを守るためと尊敬を集めるために、彼らはこの新たな力を武器に変えた。
転移者村の人々は今や、恐れていた魔獣さえも容易に打ち倒すほどの圧倒的な魔力を手にしていた。空から雷を呼び寄せる者、全身に炎を纏わせる者など、村人たちは自らの新たな力を駆使して、かつての脅威を見事に退けていた。
数日後、村人たちは賢者から授かった憑依召喚の魔導書を活用し、ダンジョンでの魔獣狩りに精を出していた。彼らが見せる熱量は、これまでの苦難を晴らすかのように猛烈だった。憑依召喚された存在の力は圧倒的で、他の手段では太刀打ちできないレベルに達していることが明らかになった。
魔獣討伐の成功、強大な魔法の使用、そして階位の上昇による肉体強化――これらの効果が絶妙に重なり、村人たちは前例のない力を手に入れていた。しかしながら、その力の制御はまだ未熟で、攻撃の余波で周囲の生態系まで破壊してしまうことが度々あった。彼らが通り過ぎた後には、何もかもが焼き尽くされるような有様だった。
力の証明を果たし、さらにはそれによって金を稼ぐことへの渇望は、彼らの気持ちを一層高ぶらせていた。魔獣の討伐から得られる報酬金だけでなく、魔獣の部位を素材として売買することからも大きな収益を上げていたのだ。
特定の魔獣から得られる希少な部位は、高額で取引されることもあり、魔石のように常に需要のあるアイテムも魔獣から得られることが多い。探索ギルドでは、これらの戦利品の売買を仲介し、材料の買取やオークションを手がけている。ダンジョンのある町では、探索ギルドの存在がますます重要になり、彼らの活躍によってギルド自体の発展も促されていた。
このような活躍により、転移者村の人々は相当な金額を稼ぎ出しており、その急激な変化にギルド側も驚きを隠せなかった。しかし、彼らの実績は明白で、ギルドは彼らの要求に応えるべく、より良い対応を心掛けていた。
この世界では、力が全てを物語る。魔力によって得られる利益は計り知れず、かつては相手にもされなかった村人たちが、今や尊敬と畏怖の対象となっている。彼らの行動1つ1つが、探索ギルドや周囲のコミュニティに新たな動きをもたらしていた。
探索ギルドは、ダンジョンを中心とした活動を通じて成長した組織であり、貢献度に応じた手厚い対応を行うことで知られている。今回のように、一気に多くの有能な者が現れたことは、ギルドにとっても前向きな傾向であり、その対応には最大限の努力が払われていた。
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