第5話:残忍な勇者と抗う決意(2/2)

 他のグループが怒りに満ちた表情で勇者に意見しようと前に出ると、突如、彼らの中の一人の頭が地面に転がり落ちた。その体は主を失い、仰向けに倒れる。


 この瞬間、勇者が宣言する。


「俺の命令は絶対。理由は? 神託に選ばれし者だからだ!」


 勇者は更に力を込めて語る。


「見よ! この者が神託に反逆し、自らの身の丈を知らずに神に背いた結果だ」


 頭髪を掴み、胸の高さまで持ち上げながら、彼は付け加える。


「この者は神に冒瀆と裏切りの手を挙げた。その罪で処刑した。他の者も同じ末路を辿りたくなければ、従え」


 言い終えると、首を放り投げ、勇者は後方へ歩を進める。傲慢に振る舞う姿勢であり、同胞であるにも関わらず助ける気もなく、手を差し伸べようともしない。


 彼の圧倒的な力に誰もが逆らえない中、転移者の村は過去に勇者と衝突したことがあり、覚えが良くない。そのためか、今回は盾として最前線に立たされる。


 抗う手段もなく従うしかなかったが、本当にそれしか道はないのだろうか。


 対話で理解を求めることは不可能なのか。勇者の増長した態度では、対話がさらに事態を悪化させるだろう。力に酔いしれ、誰もが畏怖する彼を止められる者はいない。


 しかし、勇者も日本人の一人。同郷の心情に訴えることはできないのだろうか。だが、彼の振る舞いに恐怖してしまい、心が声を上げる勇気を失う。


 もしかすると、直接交渉してみる価値はあるかもしれない。失敗すれば命を落とすリスクがあるが、躊躇している場合ではない。


 そんな折、村の別の住人が勇者に立ち向かう声を上げる。何か耐え難い思いをしていたのか、以前から勇者に対する不満が爆発した。


 青年は勇者の無軌道な行動に呆れ果て、「これは許されざる行為だ」と非難する。


 しかし、勇者は薄ら笑いを浮かべ、光る何かを放つと、その青年は即座に切り刻まれた。


「見たな? これが俺の力だ。従わなければ同じ運命をたどる」


 この日、勇者による犠牲者は二人目になった。彼はまさに殺戮者だった。


 その場の空気は一瞬にして凍りつき、彼らは恐怖と絶望に打ちのめされた。誰もが声を失い、心も凍りついた。


 蓮司は驚愕で眉を上げ、口を半開きにする。動揺し、何もできずにただ見守るだけるしかなかった。


 蓮司は、勇者の振る舞いに人間性を見出せず、深い失望を感じる。解決策が見えない諦めと、怒りが交錯して、彼は憤りを隠せなかった。


 この状況を前にして、蓮司は思う。「最前線はこんなにも残酷なのか」と。


 絶望的な現状を目の当たりにしつつも、蓮司は奥歯を強く噛みしめ、何としても生き延びなければと心に誓った。そして、彼は悟った。この戦場で生き抜くには、積極的に生を追求するよりも、死を避けることを優先する方が賢明だ。なぜなら、後者は文字通り「死なないこと」を最も重視する戦略だからだ。


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