第2話:未知への共感(8/9)
「暗くなる前に行動した方がいいな。どちらに進めばいい?」蓮司は、新たな挑戦に向けて準備を始める。
妖精は彼に指示を出す。「ちょっと待って……そこから何か建物が見えない?」
「ここは森の中の河原で、周囲は木々に囲まれているな。少し先には洞窟のようなものが見えるぞ」
「それね……。そうすると……」
蓮司の問いに、妖精は続きを告げる。「その洞窟の方向に向かって」
「ああ、あれか。目と鼻の先だからすぐつくよ」
「うん、待っているわ」
この会話は、蓮司にとって異世界での新たな使命を示すものだった。妖精との出会いは、彼の人生における大きな転機となり、未知への好奇心をさらに深める。手元の作業を止め、彼は妖精の封印解除に向けて動き出す。
蓮司が妖精の指示に従い、川沿いを進んだ先には、自然の中にひっそりと佇む洞窟が現れた。洞窟の奥には、不意に光が差し込む場所に、神秘的な祠が建てられていた。異世界にあるにも関わらず、その造りは何故か懐かしくもあり、同時に遠い過去の繋がりを感じさせるものだった。
祠の構造は、その大きさと質感が、日本のそれを思わせる石造りであり、その存在自体が謎を孕んでいた。祠の中心には、灰色で艶のない壺が祀られており、その周囲にはしめ縄が巻かれ、神聖な空間を演出していた。
蓮司は、この未知の世界での遭遇に、好奇心と同時に警戒心を持っていた。妖精という存在に対する不安と、未知への挑戦が複雑に絡み合う中で、彼は自分の直感を信じることを選んだ。
「おーい、そこにいるか?」蓮司が声をかけると、祠の中から妖精の声が返ってきた。
「うん! いるよ!」その応答は、どこか安堵と興奮を同時に感じさせるものだった。
蓮司は、この出会いを通じて、異種族との接触に対する深い興味とともに、助けを求める者に手を差し伸べる決意を新たにしていた。「一つ聞いていいか? 封じられた理由は?」
妖精の答えは、謎に包まれたままだった。「よくわからないわ。親しかった人から急に取り囲まれて壺に封じられたの……と言っても、あたしだけの言葉だから信じ難いよね……」
蓮司にとって、ことの真偽よりも、目の前にいる存在への信頼と、この新たな世界での経験が何よりも価値あるものだった。彼は、妖精との不思議な縁を通じて、異世界での役割を見出し、未知への探究心を一層深めていった。
蓮司の心は、好奇心と少しばかりの緊張で揺れていた。妖精とのこのやり取りは、彼にとって未知の体験の連続だった。妖精からの答えは、思ったよりも直接的で、彼女の求めるものが明確になった瞬間だった。
「それで? 俺はどうすればいい?」彼が尋ねると、妖精の答えは意外にも素直なものだった。
「血……血で封印を消す必要があるの。でも、そんなことをいきなり言われても困るよね……」彼女の声には、躊躇いと緊張が混じり合っていた。
蓮司は軽く笑いながら答えた。「いやいや、この世の終わりみたいな声を出すなよ……。大量に出すわけじゃなければ大丈夫さ」
「本当? 絶対の絶対?」妖精の声には、一縷の希望が感じられた。
彼は具体的な方法を探るために質問を続けた。「ひとまずさ、どうやるんだ? 正面と左右に札が1枚ずつあってさ、壺にはしめ縄が巻かれているぞ? 壺の蓋は何の素材だ? 木なのか?」
妖精の返答は、彼の期待を複雑なものにした。「多分ね、触れても札は剥がせないはずよ。しめ縄も解けないし、蓋も外せないわ」
それではどうするかと蓮司は妖精に聞き出す……。
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