第1話:選ばれざる者の瞬間(4/4)
「やはり魔力はないみたいですね……」蓮司ががっかりして言うと、男性は激励の言葉をかける。
「気にするなよ。魔力がなくても立派にやっていける。ギルドには色んな仕事があるし、魔法の仕事だけが全てじゃないからな」
「そうですか……ありがとうございます」
「こちらこそ、新しい仲間を迎えられて嬉しいよ。何か分からないことがあったら、いつでも聞いてくれ」
蓮司は受付の男性とのやり取りを通じて、異世界での新生活への希望を見出し始める。男性はさらに励ますように言った。
「まあ、気を落とすなよ? なくても生きていけるし、かつてここにも魔力がなかった英雄がいたんだ」
「そんな人がいたのですか?」蓮司は驚いた。
「ああ、いたさ。魔力がなくても大成した人物で、俺にとってはそいつが最強の英雄だよ」男性は熱く語る。
蓮司の好奇心が刺激され、「そうだったのか……。もっと聞きたいことが……」と言い、彼は彼の心を悩ませていたことを一つずつ尋ねていく。魔力がなくても後天的に身につけられるスキル、金の単位や一般的な生活費、町の情勢、近くに転移者がいるかどうか。
「どうだ? 聞きたいことはそれだけか?」男性は気軽に尋ねる。
「だいぶわかりました。助かりました」蓮司は心から感謝する。
「ならよかった。お前のように魔力がないヤツは他にもいて、集落があるから行ってみるといいさ」
「集落はどこですか?」蓮司はさらに質問する。
「町の中央の道をまっすぐに行くともう一つの出口に出る。出口から左にまっすぐ行けば、今からなら夜にならずにつけるぞ」
「何から何までありがとうございます。いきなり金にもならない話ばかりなのに、本当に助かりました」蓮司は深く感謝の意を表した。
「まあ、いいってことよ。集落は転移者の村で、数十人はいるらしいぞ」
この情報は蓮司にとって価値があった。同じ境遇の者たちがいることを知り、彼は安堵する。
「情報ありがとうございます」
「仕事はいろいろあるからまたきな」
「わかりました」
蓮司は心強い思いを胸に、ギルドを後にした。同郷の者たちとの助け合いを期待しつつ、彼は転移者の村を目指して歩き出す。異世界での新たな生活の始まりに向けて、蓮司の心は前向きな期待で満たされていた。
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